錬金術のけっこう有名な用語として
「賢者の石(けんじゃのいし)」(philosophers’ stone)というものがあります。
これは錬金術の目的である「金」*2を作り出すために必要な物質とされました。
ゲームとかでは大抵「すごい力を持った物質」として扱われますね。
『ハリー・ポッター』やマンガ『鋼の錬金術師』にも出てきました。
この「賢者の石」ですが、人間に不老不死を与える「エリクサー(elixir)」と同一視されたりします。
エリクサーは賢者の石を使って作れる霊薬(れいやく)、もしく賢者の石自体を溶かしこんだものとされました。
この「エリクサー」も良くRPG*3系ゲームに出てきますね。『FF』とか。
不死にはなれませんがHP・MP全快アイテムとしてよく使われます。
これは医療活動にも使えるらしく、
前記事ででて来た「パラケルスス」という錬金術師は、これを医療活動に使っていたという伝説があります。
この人は人工生命体である「ホムンクルス」を作ったとのうわさもある人ですが……まあその話はまた今度。
さて、「賢者(けんじゃ)」というと賢い人のことですが
「愚かな人」である「愚者(ぐしゃ)」の名前を冠した物質も存在します。
その名も「愚者の黄金(ぐしゃのおうごん)/fool's gold」。
こちらは普通に実在の物質です。
「黄鉄鉱(おうてっこう/pyrite、パイライト)」という金属*4がそれに該当します。
パッと見は金だけど金じゃないということから、その名がついたようですね。
鉱山*5で掘り出して「金か!?」と思ってはがっかりしていたようですね。
これが特に「賢者の石」と関係がある訳ではありません。
でも「こういうのが本物の金にならねえかな~!」と思っていた所から
錬金術やのちの科学が発展したのだとすれば、
「愚者の黄金」も意外と捨てたものではないかもしれませんね。
まあそんな感じで~。
◆用語集
・賢者の石:
英語では「philosophers’ stone(フィロソファーズ・ストーン)」。
「philosopher」は「哲学者」*6のことなので「哲学者の石」ともいうようだ。
ラテン語では「lapis philosophorum(ラピス・フィロソフォルム)」。こちらの名前がゲームに使われることも多い。
マンガなどではすごいパワーを持ってるだけに、これのために多くの人が醜く争ったり死んだりしたりもする。
なので最終的に誰かがこれを手にしたとしても、その人が「賢者」とは言えないかもしれない。
関連用語:「賢者(けんじゃ)」*7、「石(いし)」*8、「lapis(ラピス)/石」*9【ラテン語】、「ヒヒイロカネ」*10
関連記事:『石を表す外国語セブン』
・エリクサー(elixir):
詳細は本文参照。
液体形なので「ポーション」*11の一種と言える。
RPGで強力な回復アイテムとして出てくるが、強力過ぎてかえって残したままゲームをクリアしてしまったりする。
ちなみに化粧品*12ブランドの「エリクシール(Elixir)」はフランス語で「霊感(れいかん)」「粋(いき)」*13「情(じょう)」「エッセンス」*14を意味する所から付けたらしい。
エリクサ―とつづりが同じなので、語源のところでは関わっているかもしれない。
ちなみにカードゲーム『遊戯王』には《E・HERO エリクシーラー》というモンスターがいる。
関連用語:「アランビック」*15、「ランビキ」
関連ゲーム:『ファイナルファンタジー』*16
・黄鉄鉱(おうてっこう):
英語だと「pyrite(パイライト)」。
名前に「愚者」と付けられた可哀想な存在。
でも「愚者の黄金」という響きが格好良いのか、好んで使っているゲームもある。
だがその場合実在の「黄鉄鉱」とは別の「なんかすごい物質」になってたりするので、やはり黄鉄鉱は可哀想かもしれない。
ちなみに「赤鉄鉱(せきてっこう)/hematite(ヘマタイト)」というのもある。
黄鉄鉱は鉄の「硫化鉱物(りゅうかこうぶつ)」。つまり鉄(Fe)が「S(硫黄/いおう)」と反応したもの。
赤鉄鉱は鉄の「酸化鉱物(さんかこうぶつ)」。つまり鉄(Fe)が「O(酸素/さんそ)」と反応したもの。
あとは「青鉄鉱」でも欲しいところだが、そのものはないらしい。
だが「鉄鉱 青」で検索すると綺麗な青色をした鉱物の画像が見られた。
関連用語:「鉱物(こうぶつ)」*17
・愚者(ぐしゃ):
「愚か者(おろかもの)」のこと。頭が良くない人、または考えなしの人。
タロットカード*18の絵柄の一つでもある。
関連用語:「愚か(おろか)」*19
・パラケルスス(Paracelsus):1493-1541。
本名はテオフラストゥス・(フォン)・ホーエンハイム。
いわゆるルネサンス*20期に生きた人物。wikiの記述では「フッガー家」「ルター」などの関わりが見られる。
錬金術師と紹介したが、wikipediaを見ていると「医師・化学者・錬金術師」と紹介した方がよさそうだ。
レオナルド・ダ・ヴィンチもそうだが昔の人は結構マルチに活動してたりする。特にその学問を始めたような人は。
実在の人物だったようだが、「賢者の石」を作ったとか「ホムンクルス」を作ったとか色んな伝説がある。
とりあえず「医科学の父」「毒性学の父」と呼ばれるなど、現代の医療・科学に大きな貢献をしていることは確かなようだ。
歴史上の偉人がいっぱい出てくるゲーム『Fate』*21においても登場。なんかイケメン化されている。
関連用語:「アヴィケブロン」*22、「ゴーレム」、「クローン」*23
・ホムンクルス:
錬金術で作られた人工生命。
関連用語:「ゴーレム」、「フレッシュ・ゴーレム」*24
*1:「錬金術(れんきんじゅつ)」については5/22 理科:四大元素(しだいげんそ)の話 ~地水火風~ - のっぽさんの勉強メモ参照。
*2:「金(きん)」については12/3 世界史:塩とコショウ、保存と時間 - のっぽさんの勉強メモ参照。
*3:「RPG」については 3/14 こころの話:人生(じんせい)/君と道を行くRPG - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*4:「金属(きんぞく)」については 5/17 学習:イメージ・ネットワーク ~色んな所にネタを探す~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*5:「鉱山(こうざん)」については 2/4 算数:わり算/強欲(ごうよく)なやつらの宝石(ほうせき)採り! - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*6:「哲学(てつがく)」については 1/5 数学:なぜ「1+1=2」ができるのか(雑考) - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*7:「賢者(けんじゃ)」については 7/24 英+理:薬草/セージと賢者(けんじゃ)と救世主(きゅうせいしゅ)! - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*8:「石(いし)」については 12/26 英語:単語/関係(かんけい)を意識してみる ~石と山とか、朝と夜とか~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*9:「石」などの意味を持つラテン語「lapis(ラピス)」や、記事『石を表す外国語セブン』については 10/7 理+諸外他:「石(いし)」を表す外国語7つ+α! ~今週の外国語セブン~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*10:古代日本で使われていたとされる伝説の金属「ヒヒイロカネ」については 4/3 歴+ゲーム他:「赤(あか)」だったり「青(あお)」だったりする「金属(きんぞく)」!? ~伝説の金属「ヒヒイロカネ」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*11:「ポーション」については12/12 英語+学習:あなたのポーションはなあに? - のっぽさんの勉強メモ参照。
*12:「化粧品(けしょうひん)」については 4/24 英語:costume/氷上の美少女戦士!? ~スケート、コスプレ、習慣~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*13:「粋(いき)」については 12/27 こころ+国:「なまいき」は「粋(いき)」じゃないですか? ~「生意気(なまいき)」と「粋(いき)」と「意気(いき)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*14:「エッセンス」については 1/2 歴+国:「初詣(はつもうで)」のメモ ~「詣(けい)」の字と「人」と「神さま」~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*15:蒸留器の「アランビック」や「ランビキ」については 6/1 理+社他:「ランビキ」はグローバルな蒸留器(じょうりゅうき)ですか? ~ギリシャ、アラビア、ポルトガル、日本~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*16:RPG『ファイナルファンタジー』については 6/26 英語:似た言葉比べ/「合成(ごうせい)」・「合体(がったい)」・「融合(ゆうごう)」 - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*17:「鉱物(こうぶつ)」については 7/17 歴史:「黒曜石(こくようせき)」の話 ~冷えた溶岩の恵み~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*18:「タロット」については 1/22 理科:すごいよ!太陽(たいよう)さん ~理科の教科書を貫く用語~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*19:「愚か(おろか)」については 4/15 国+こころ:「おろそか」にするのは「おろか」ですか? ~「疎か(おろそか)」、「疎か(おろか)」、「愚か(おろか)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*20:「ルネサンス」については10/17 歴史:接頭辞「re」とルネッサンス! ~破壊されたものを再生する~ - のっぽさんの勉強メモ参照。
*21:『Fate』については 4/24 英語:お遊び/中二病的な英文例 ~あいつは魔王で魔眼使い~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*22:「アヴィケブロン」や「ゴーレム」については 4/21 歴史:「詩人(しじん)」にして「ゴーレム」の製作者!? ~「アヴィケブロン」という人物の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*23:「クローン」については 2/10 理科+こころ:細胞の入れ替わりと「私」 - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*24:肉で作られたゴーレム「フレッシュ・ゴーレム」については 10/14 国+体他:「贅肉(ぜいにく)」は「贅沢(ぜいたく)」な「肉(にく)」ですか? ~「贅(ぜい)」の字と「余分(よぶん)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。