のっぽさんの勉強メモ

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1/7 歴史:薪(たきぎ)に寝て、肝(きも)を舐める話!? ~「臥薪嘗胆(がしんしょうたん」と「復讐(ふくしゅう)」の連鎖~

 歴史の話ー。

 中国*1故事成語の「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」と、
 それにかかわる人物、「夫差(ふさ)」と「勾践(こうせん)」についての話を。


(本文中、人名敬称略)



 前置き。
 今「横山光輝(よこやま・みつてる)」先生の漫画『史記』を読んでいるのですが、とても面白いですね。
 これは中国の古文書の『史記』などなどをもとに描かれているマンガで、
 中国の昔の出来事などが色々描かれています。


 さて、日本でも知られている四字熟語に「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」というものがありますが、
 これはわざと寝にくい「薪(たきぎ)」の上に寝たり、動物の苦い肝(きも)*2を舐めて、復讐を忘れないようにする、という話です。

 これらは一人の人物がやったわけではなく、中国の二人の人物がそれぞれ行ったものと言われています。
 「臥薪(がしん)」は、「呉(ご)」という国の「夫差(ふさ)」という人物、
 「嘗胆(しょうたん)」は、「越(えつ)」という国の「勾践(こうせん)」という人物によるものですね。


 今回はそこら辺の説明を。


※ ※ ※


①「臥薪(がしん)」/呉(ご)の「夫差(ふさ)」の話

 昔の中国・春秋時代(しゅんじゅうじだい)には「呉(ご)」という国がありまして、
 「夫差(ふさ)」はその国の王子だったようです。
 紀元前6世紀末ごろ、夫差の父である呉王の「闔閭(こうりょ)」は「越(えつ)」という国と争い、殺されてしまいます。
 闔閭は死に際に夫差に「仇を取るように」と言い、夫差もこれを了承。
 父が死んだ後、夫差は薪(たきぎ)の上に寝て、その痛みで屈辱を思い出し、復讐の心を忘れないようにしたそうです。
 これが「臥薪嘗胆」の「臥薪」に当たる行為ですね。

 人間は何かと忘れやすい生き物ですので、
 復讐の心を忘れてしまうことを恐れ、わざと自分に痛みを与えたのだと思われます。

 そうして呉の国は力を蓄え、やがて「越」の国に復讐することができました。
 それで終わっていれば、まあ分かりやすい復讐譚だったのですが…。



②「嘗胆(しょうたん)」/越(えつ)の「勾践(こうせん)」

 ところが、復讐というものは、自分の都合のいいように終わってくれないようです。
 この夫差の勝利に対して、復讐を行う人物がいたのです。
 それこそが越の「勾践(こうせん)」。

 ①で書いたように、呉の「夫差(ふさ)」は越に攻め入り、当時の越王「勾践(こうせん)」に勝つことができました。
 勾践は降参し、その後しばらくは夫差の馬小屋*3で働かせられたりしたそうです。
 彼はしばらくの後 国に帰ることができたのですが…。

 ですが彼もまた、復讐を忘れるものではありませんでした。

 彼は国に帰ったのち、動物の苦い肝(きも)を舐めることで、屈辱を忘れないようにしたそうです。
 これが「胆(きも)を嘗(な)める」ことであり、「臥薪嘗胆」の「嘗胆(しょうたん)」に当たる行為です。

 そして20年後、勾践は呉を攻め、夫差の軍は大破。その結果夫差は自決します。

 薪の上に寝て、ついに復讐をなしとげた呉の「夫差」でしたが。
 肝を嘗め、復讐を忘れなかった「勾践」に破れるとは、思っていなかったかもしれません。



 「復讐」する側の物語は、復讐を遂げて終わりかもしれませんが、
 相手側もそう思ってくれるとは限らないもの。
 今回のように。また新しい復讐を産んでいる可能性もあります。


 俗にケンカも戦争も、始めるのは簡単で、止めるのは難しいとも言います。
 たとえそれが自分としては正しい気持ちでの「復讐」でも、
 相手に手を出す前には、ちょっと止まって考えた方がいいのかもしれません。
 でないと自分だけでなく、周りをも「復讐」の被害に巻き込んでしまうかも…?



 まあそんな感じで~。



 関連用語:「ことわざ」*4、「条約(じょうやく)」*5、「四字熟語(よじじゅくご)」*6、「戦時国際法(せんじこくさいほう)」*7、「アヴェンジャー」*8



追記
 ちなみに呉王の「闔閭(こうりょ)」のころから仕えていた人物に「伍子胥(ごししょ)」という方もいます。
 この方もまた自分を追い出した「楚(そ)」という国への復讐者であったりもします。
 「死者に鞭打つ」という言葉がありますが、彼が行ったことだったりします。
 ちなみに彼の同僚には「孫武(そんぶ)」という兵法家の方もおります。俗に「孫子(そんし)」として知られている方ですね(もっとも「孫子」という時は彼の子孫の「孫臏(そんぴん」*9と混ざって考えられることもあるようですが)。



追記2
 ちなみに越王「勾践」の剣は現代にも残っており、
 「越王勾践剣(えつおうこうせんけん)」として展示されていたりします。
 画像を見ましたが、刀身がとてもきれいですね。2000年くらい時間がたっているのにあまり錆びていません。
 Wikipediaによれば宝石のターコイズと青水晶とブラックダイヤモンドもはめ込んであるようです。いろいろすごいですね。



◆用語集
・薪(たきぎ):
 燃やすために加工した木材。燃料としての木。
 「薪(たきぎ)」は「薪(まき)」とちょっと違うという話もある。
 英語では「firewood(ファイアウッド)」など。
 木は手に入りやすいため、昔から燃料として人間に使われてきた。
 関連用語:「着火(ちゃっか)」*10、「焚き付け(たきつけ)」*11、「焚き火(たきび)」、「炉(ろ)」*12、「風呂(ふろ)」、「炭(すみ)」*13、「石炭(せきたん)」、「火かき棒(ひかきぼう)」*14、「松明(たいまつ)」*15、「枝(えだ)」*16


・薪(まき):


・夫差(ふさ):? - 紀元前473年。
 中国春秋時代の「呉」の第7代、最後の王。
 「春秋五覇(しゅんじゅうごは)」の一人に数えられることがあるらしい。
 父は先代の王である「闔閭(こうりょ)」。
 薪に寝て「復讐」を果たしたが、自らもまた勾践の「復讐」によって倒されてしまった。
 ちなみにWikipediaによれば、日本の「松野連(まつののむらじ)」は夫差の子孫である、という話があるようだ。


・勾践(こうせん):? - 紀元前465年。
 中国春秋時代後期の越の王。
 「春秋五覇(しゅんじゅうごは)」の一人に数えられることがあるらしい。
 肝を嘗めて復讐を忘れなかった人物。
 本記事の「追記」で書いたように彼のものとされる剣「越王勾践剣(えつおうこうせんけん)」が見つかっているほか、「呉王夫差矛(ごおうふさほこ)」という鉾も見つかっているようだ。ちなみにこちらも腐食はないらしい。すごい。


春秋時代(しゅんじゅうじだい):
 中国の時代の一つ。
 Wikipediaによれば、「周(しゅう)」の国が東西に分裂した「紀元前770年」から、現在の山西省一帯を占めていた大国「晋(しん)」が三国に分裂した「紀元前5世紀」までの、およそ320年に渡る期間、を指すらしい。
 関連用語:「食客(しょっかく)」*17
 関連時代:「南北朝時代(なんぼくちょうじだい)【中国】」*18


春秋五覇(しゅんじゅうごは):
 中国の「春秋時代」において、周王朝に代わって天下(中国)を取り仕切ったとされる覇者(はしゃ)のこと。
 資料によって該当メンバーが変わったりするが、とりあえず「斉の桓公(かんこう)」と「晋の文公(ぶんこう)」は必ず入るらしい。


伍子胥(ご・ししょ):(? - 紀元前484年。
 春秋時代・呉の政治家、軍人。
 Wikipediaによれば、九尺(約2m)を超える身長だったらしい。
 代々「楚」に使える家だったが、「平王(へいおう)」の時に父と兄を殺され、自分も殺されかける。
 伍子胥は国外へ脱出し、復讐を誓うのだった。
 やがて彼は呉の「公子光」に出会い、彼に使えることとなる。この公子光こそがのちの呉王「闔閭(こうりょ)」。
 ちなみに闔閭に対して兵法家「孫武(そんぶ)」を雇うように働きかけたのは伍子胥であるという。この努力が無ければ、現代での「孫子」の評判はなかったかもしれない。
 やがて呉と楚は戦争になり、呉はその都「郢(えい)」を落とすことに成功。だがその時には復讐相手の「平王」はすでに死んでいた。恨み晴れぬ伍子胥は王墓を暴かせ、平王の遺体を鞭で叩かせたという。これが「死者に鞭打つ」ことの語源であるという。
 その後しばらくして、闔閭は死に、子の「夫差(ふさ)」が王となる。伍子胥はそのまま仕えたが、色々な食い違いもあって伍子胥と夫差の関係は悪化。やがて夫差に剣を渡され、自害を命じられる。
 伍子胥は越によって呉が滅ぼされることを予言しながら、自害したという。


孫武(そんぶ)/孫子(そんし):紀元前535年? - ?
 中国古代・春秋時代の武将・軍事思想家。
 兵法書孫子』の作者とされている。
 関連人名:「孔子(こうし)」*19



・伯嚭(はくひ):? - 紀元前473年?
 中国、春秋時代の呉の政治家。
 Wikipediaによれば彼も元々楚にいたが、親類を殺され呉へ亡命したらしい。
 その後に呉が楚を攻めたので、彼も復讐を果たした人物である。
 つまり上記の「伍子胥」と似ているのだが、伯嚭は呉王の「夫差」にいろいろ吹き込んで、「伍子胥」との中を悪くさせた、ともされる。
 ちなみに越が呉を滅ぼした時、敵だった越王「勾践」によって悪臣(あくしん)の見本として処刑され、晒し首にされたらしい。…敵からそうされるとは、どれだけだったんだ、という感じもする。






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*1:「中国(ちゅうごく)」については 12/16 英語:中国はなんで「China(チャイナ)」って言うの? - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*2:「肝(きも)」については 3/29 国+こころ他:「心(こころ)」は「肝臓(かんぞう)」にありますか? ~「肝心(かんじん)」と「肝(かん)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*3:「馬小屋(うまごや)」については 4/12 英+社他:「馬小屋(うまごや)」は「安定(あんてい)」してますか? ~2つの「stable(ステイブル)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*4:「ことわざ」については 12/24 国語:「ことわざ」は「言葉(ことば)」の「技(わざ)」ですか? - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*5:「条約(じょうやく)」については 9/28 英+社:「貿易(ぼうえき)」に関する英語7つ+α! ~今週の英語セブン~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*6:「四字熟語(よじじゅくご)」については 12/23 国+ゲーム:ゲームを通して「四字熟語(よじじゅくご)」を学ぶ!? - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*7:戦時国際法(せんじこくさいほう)」については 1/17 歴+こころ:振り上げたこぶしの下ろし方 ~戦争と法、そして終え方~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*8:「アヴェンジャー」については 8/31 数+ゲーム:夏休みを振り返って遊ぶゲーム!? ~ゲーム「サマバケ・キャラメイカー」~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*9:「孫臏(そんぴん)」については 1/17 歴+学:受験のテクニックと「競馬(けいば)」の関係!? ~兵法家「孫臏(そんぴん)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*10:「着火(ちゃっか)」については 1/11 英+理他:「着火(ちゃっか)」についての英語7つ+α! ~今週の英語セブン2~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*11:「焚き付け(たきつけ)」や「焚き火(たきび)」については 12/21 生+国:「キャンプ」も「サスペンス」も「焚き付け(たきつけ)」ますか? ~「焚き付け」と「焚き付ける」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*12:「炉(ろ)」や「風呂(ふろ)」については 3/26 歴+国:お湯を「沸かす」のに「涼しい」名前!? ~茶道の「風炉(ふろ)」「涼炉(りょうろ)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*13:「炭(すみ)」や「石炭(せきたん)」については 5/19 英+理:炭酸(たんさん)とカルボナーラ! ~日常に溢れる「炭(すみ)」成分~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*14:「火かき棒(ひかきぼう)」については 1/26 ゲーム+英:「ポーカー」といえば「火かき棒(ひかきぼう)」ですか? ~二つの「poker(ポーカー)」と「ポーク」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*15:「松明(たいまつ)」については 4/11 国+歴:「たいまつ(松明)」の「松(まつ)」は動きますか? ~「松明(たいまつ)」と「焼松(たきまつ)」等の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*16:「枝(えだ)」については 9/9 理+諸外:「枝(えだ)」を表す外国語7つ+α! ~今週の外国語セブン ~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*17:食客(しょっかく)」については 1/19 歴史:王ではないのに、強い「4人」!? ~中国の「戦国四君(せんごくしくん)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*18:中国の「南北朝時代(なんぼくちょうじだい)」については 9/15 歴+音:顔を隠す歴史的イケメン!? ~武将「高長恭(こう・ちょうきょう)」、そして『蘭陵王』の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。

*19:孔子(こうし)」については 10/3 国+英:「あした」っていうのは「朝」のこと? ~「あした」と「朝」と「tomorrow(トゥモロー)」の関係~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。