歴史の話ー。
別に必ず争いが起きるわけではないので悪しからず。
本に載っていた中国*1の「後宮(こうきゅう)」の話、
また「四夫人(しふじん)」や「四妃(しひ)」といった言葉などについての話です。
※話題の性質上、ちょっとアダルトな話が入ってくるのでご注意を。
前置き。
以前、筆者は『一華後宮料理帖』という小説を読んでいまして。
それは中国の後宮(こうきゅう)…皇帝*2の奥さん*3たちがいる所を舞台にした小説だったのですが、
そこで「四夫人(しふじん)」や「四妃(しひ)」といった言葉が出てきまして。
響きがカッコいいなあと思っていたのですが。
その後に読んだ別の小説『後宮香妃物語』でも「四夫人」や「四妃」という言葉が出てきたので、
不勉強な筆者は「四夫人って実際にいたのか…」と気になって調べてみました。
※
まず改めて「後宮(こうきゅう)」とは、皇帝や王さまなどの奥さんが住まう場所ですね。
今の日本は基本(同性も含め)夫婦は「1対1」みたいな感じが多いようですが。
昔の王様や偉い人(特に男性)は、何人も奥さんがいることがあったようです。
(外交*4上の話や、王様の「血」を残すことなどが重要視されていたようです)
その奥さんたちがいる所が「後宮」ですね。
日本では似たものとして「大奥(おおおく)」などが有名でしょうか。
で、Wikipediaで調べてみると
中国の「唐(とう)」の時代に「四夫人(しふじん)」という呼称があって
「貴妃(きひ)」、「淑妃(しゅくひ)」、「徳妃(とくひ)」、「賢妃(けんひ)」という呼び名を持つ方々がおられたようです。
またちょっと後の「宋(そう)」の時代の制度に「四妃(しひ)」という名前があるようなので、多分内容は上の「四夫人」と同じかと思われます。
この人々は一番偉くて、その下に色んな位の人がいたりします。
逆に言えば上下関係がある、ってことですね。
実際の後宮がどうか、というのは筆者はよく知らないのですが、
小説やマンガなどでは、よく後宮は「ドロドロした場所」として描かれたりします。
(歴史上も色々事件がありますが、残虐だったり濃かったりするのでここでは略)
まあ単に上下関係があるだけでもドロドロするでしょうし、
閉鎖された空間に人がいっぱいいるだけでもストレスたまりますし。
そして後宮の人々も色んな家や一族から送り込まれてきてる以上、皇帝の愛というか、それに伴う「利益(りえき)」*5を勝ち得ようと必死になっていたかとは思います。
そんな中でトップに位置する「四夫人」や「四妃」は、もしかしたらすごい気苦労が多かったかもしれません。
(まあ争うのが楽しいという性格の方もいたかもしれませんが)
「自分一人に対し、異性(とか)がいっぱい!」という、いわゆる「ハーレム」は時に「夢」とされたりもしますが、
人が集まれば上下関係を争い、恨みつらみも起こったりします。
あなたがもし「後宮」や「ハーレム」を作れる立場になっても、ちょっと注意した方が良いかもしれません。
まあそんな感じで~。
追記
ちなみに現代でいう「ハーレム」と、本来の意味の「ハレム」という言葉はまた違った意味だったりします。
あと「逆ハーレム」という言葉もあります。
女性一人に(カッコいい)男性がたくさん、という状況ですね。
pixivの百科事典では関連マンガに『桜蘭高校ホスト部』という作品が載っていたりしました。
あと結婚のスタイル・システムはそれぞれ
・一人の夫に一人の奥さん … 「一夫一妻制(いっぷいっさいせい)」
・一人の夫に複数の奥さん … 「一夫多妻制(いっぷたさいせい)」
・一人の奥さんに複数の夫 … 「一妻多夫制(いっさいたふせい)」
みたいな名称で呼ばれたりします。
ちなみに本人たちの意志や権力*6関係はシステムとはまた別なので、幸・不幸はまた個々の問題になるかもしれません。
追記2
ちなみに色々調べてみる間に『皇貴妃の宮廷』というドラマがあるのを知りました。
これは「清(しん)」の時代の話で、上記のものよりはまた後の時代のようです。
また『薬屋のひとりごと』という作品も後宮が舞台のようです。
この作品は元はオンライン小説で、漫画も出ているようですね。
◆読んだうえで紹介した文献 (人名等敬称略)
・三川みり、2016~、『一華後宮料理帖』シリーズ、角川ビーンズ文庫
・伊藤たつき、2017~、『後宮香妃物語』シリーズ、角川ビーンズ文庫
◆用語集 (人名等、ときどき敬称略)
・後宮(こうきゅう):
王様や皇帝の奥さんが住んでいる場所。
イスラム圏や中国では基本的に男子禁制だったらしい。その代わり、去勢された…男性のアレをアレした「宦官(かんがん)」*7という男性は入って仕事や手伝いができたという感じらしい。
一方で、Wikipediaによれば日本の場合は「宮人(きゅうじん)」という女性職員が仕事をしていたようだ。
ちなみに物理的な話、奥さんの人数が多ければ多いほどちゃんと向き合うのが大変になる。
数学的に考えると、1日は「24時間」なので、奥さんが「24人」いた時点でその中の1人と過ごせる時間は「1日1時間」ということになる。しかも仕事や睡眠時間を考えないのでそれなので、実際にはまあもっと早く限界は来ると思われる。
「1日」を単位として割り振るパターンもあるが、その場合は30人の奥さんは1月に1回しか旦那さんに会えない感じになる。ちょっとした単身赴任(たんしんふにん)みたいである。
では半日や3時間程度を単位として、1日に複数人に会えるようにしては?という計算もあり得るが、そうなるともはやバイトのシフト割とか大学の講義の取り方みたいな感じになって、ますます世知辛い感もある。
…まあそもそも待たされる&大勢の中の一人の奥さんからすると、最初から世知辛さMAXかもしれないが。
実際には「後宮には入ったが、皇帝と顔も合わせたこともない」という女性もいたような説もある。
ちなみにWikipediaによれば中国「晋(しん)」の「武帝(ぶてい))」の後宮の女性は一時期1万人に達したらしい。…もうなんというか場所の確保だけで大変である。
1日は24時間=「86400秒」らしいので、1万人の奥さんに割ける時間は一人当たり8秒ちょいということになる。…「愛に時間は関係ない」という言葉もあるが、ここまでくると流石に厳しい気もする。
(と思ったが、一方でアイドルの「握手会(あくしゅかい)」とかはそんな感じの接触時間な気もする)
ちなみに歴史的には男性一人に女性沢山、というパターンが多かったようなのでその想定で話をしたが、別に女性が一人で男性がたくさんいるパターンもあり得る。
「よしながふみ」先生の漫画『大奥』はそのパターンの話(男性一杯の大奥)であり、面白い。でも色々切ない。
関連用語:「結婚(けっこん)」*8、「内裏(だいり)」*9、「側妃(そくひ)」、「姫(ひめ)」*10、「政治(せいじ)」*11、「犠牲(ぎせい)」*12
関連人名:「楊貴妃(ようきひ)」*13、「西太后(せいたいごう)」*14
・『一華後宮料理帖(いつかこうきゅうりょうりちょう)』:
「三川みり」先生の小説。
ほわほわした主人公が料理*15で頑張る話(in後宮)。
毎度出てくる料理の描写などがおいしそう。また政治も絡んだりしているので、色々面白い。
関連用語:「神饌(しんせん)」*16
・『後宮香妃物語(こうきゅうこうひものがたり)』:
「伊藤たつき」先生の小説。
とても鼻のいい(絶対嗅覚)の主人公が、色んなお香*17を使いつつ後宮で頑張る話。
香りの描写などが色々あるので、想像しながら読んでも楽しい。現代のアロマなどが参考になるかも。
関連用語:「調合(ちょうごう)」*18、「薬剤師(やくざいし)」、「アロマテラピスト」
・宮人(きゅうじん/くにん):
Wikipediaによれば「律令制(りつりょうせい)」において宮中に奉仕する女性職員のこと。
「律令制」とあるが、ここでは特に日本での立場を指すようだ。
のちには「女官(じょかん)」という名前になる。
これはかつて「内裏(だいり)」とされるところには一般男性は入れなかったのだが、奈良時代*19後期から内裏が重要になって一般男性も入るようになったため、特に「女官」と呼ぶようになったらしい。
ちなみに関連する言葉として「後宮十二司(こうきゅうじゅうにし)」というものもあったらしい。何それカッコいい。
・後宮十二司(こうきゅうじゅうにし):
Wikipediaによれば日本の「律令制」において規定された「宮人」の組織。
なんかやたら名前がカッコいい。「黄道十二宮(こうどうじゅうにきゅう)」*20(いわゆる十二星座)と響きも数も似ている。
なのでその気になれば「私は獅子座の担当、内侍司(ないしのつかさ)!」とかできるかもしれないが、それはもはやマンガ『聖闘士星矢(セイントセイヤ)』*21のパクリになってしまう。というか昔の日本なら「十二支(じゅうにし)」に当てはめた方がいいかもしれない。
似てる語:「菓子司(かしつかさ)」*22
・ハーレム:
関連用語:「遊び人(あそびにん)」*23、「二股(ふたまた)」*24
*1:「中国(ちゅうごく)」については 12/16 英語:中国はなんで「China(チャイナ)」って言うの? - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*2:「皇帝(こうてい)」については 9/2 英+社:国(くに)に関する英語メモ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*3:「奥さん(おくさん)」や「妻(つま)」については 12/7 生+歴他:「湯たんぽ(ゆたんぽ)」は「妻(つま)」の代わりですか? ~「湯湯婆(ゆたんぽ)」と「湯婆(タンポー)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*4:「外交(がいこう)」については 9/25 理科:「笹(ささ)」と「パンダ」と「パンダケーキ」! - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*5:「利益(りえき)」については 4/21 数+社:売買ゲーム ~儲け(もうけ)と借金(しゃっきん)のシステム(軽く)~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*6:「権力(けんりょく)」については 4/30 社+こころの話:許すこと・気分の良さ・権力(けんりょく) ~よい、儂が許す~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*7:「宦官(かんがん)」については 1/12 歴史:マイナーに見えて大切なこと~「紙(かみ)」編~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*8:「結婚(けっこん)」については 11/12 歴史:「結婚(けっこん)」「させる」側の気持ち!? ~ゲームを通して~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*9:「内裏(だいり)」については 3/2 国+歴:ひな祭り/「お内裏様」も「お雛様」!? ~テレビ番組『チコちゃんに叱られる!』の内容から~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*10:「姫(ひめ)」については 12/19 社会:お姫様(おひめさま)と一狩り行こうぜ! ~姫(ひめ)のイメージと実際~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*11:「政治(せいじ)」については 5/3 社会:政治(せいじ)ってなんだろう?(メモ) - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*12:「犠牲(ぎせい)」については 8/26 歴史:戦争と2つの「V」の話 ~勝利(victory)と犠牲(ぎせい/victim)~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*13:「楊貴妃(ようきひ)」については 3/3 歴史:有名人いっぱい映画! ~『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』メモ~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*14:「西太后(せいたいごう)」や「側妃(そくひ)」については 9/8 歴史:「西安(シーアン)」は「長安(ちょうあん)」で「豊邑(ほうゆう)」ですか? ~太公望、三蔵法師、「西安事件」etc.~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*15:「料理(りょうり)」については 12/21 国語:もっとだ、もっと素敵な文をプリーズ! ~ファンタジー料理を添えて~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*16:「神饌(しんせん)」については 3/5 国+歴:「有識者」≠「有識者」!? ~「有識者(ゆうそくしゃ)」と「有識者(ゆうしきしゃ)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*17:「お香」については 9/4 国+英:お香は「バーナー」で燃やすもの!? ~「香炉(こうろ)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*18:「調合(ちょうごう)」や「薬剤師(やくざいし)」、「アロマテラピスト」については 6/11 社会:「左官(さかん)」さんは「調合師(ちょうごうし)」ですか? - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*19:「奈良時代(ならじだい)」については8/7 歴+ゲーム:ゲーム『茜さすセカイでキミと詠う』の話 ~聖徳太子に鑑真さん~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*20:「黄道十二星座(こうどうじゅうにせいざ)」については 11/28 理科:「太陽(たいよう)」はどれくらいで「1周」しますか? ~「年周運動(ねんしゅううんどう)」と「日周運動(にっしゅううんどう)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*21:マンガ『聖闘士星矢(セイントセイヤ)』については 4/23 社+理:必殺技から星座(せいざ)を覚える!? ~コラボCMの話2~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*22:「菓子司(かしつかさ)」については 12./2 生+国他:あの「店(みせ)」は「菓子(かし)」の「支配者(しはいしゃ)」ですか? ~「菓子司(かしつかさ)」と「司る(つかさどる)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*23:「遊び人(あそびにん)」については 3/9 中+国:「遊び人(あそびにん)」は「ホワホワ」ですか? ~「花花公子(ホワホワゴンズ)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*24:「二股(ふたまた)」については 11/6 国語:「またまた」などを漢字で書けますか? ~「またまた」と「また」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。