8/29 歴＋生他：「死者（ししゃ）」をも蘇（よみがえ）らせる「名医（めいい）」！　　～ギリシャ神話の「アスクレピオス」の話～

　歴史＋生活＋こころの話ー。

　死者（ししゃ）*1をも蘇（よみがえ）らせたという、ギリシャ神話*2の「名医」、
　「アスクレピオス」という人物についての話です。

　（※本記事中、人名・神名等敬称略）

　前置き。
　一昨日にブログで「蛇（へび）」*3の古い名前「かがち」*4について書き、
　その延長でゲーム『モンスターハンター：ワールド』の「トビカガチ」について調べていたのですが…、

　その過程で見つけたギリシャの「アスクレピオス」という人物の話が面白かったので、その話を。

　（※Wikipediaでは「アスクレーピオス」だったのですが、書きやすいので「アスクレピオス」で行きます）

※

　「アスクレピオス（英語：Asclepius）」というのは、ギリシャ神話のお医者さんですね。
　この人物は名医（めいい）であることで有名で、何と死者までも蘇らせることができたそうです。

　で、まず何故「蛇」について調べている中でこの人物が？というと、
　この人物のモチーフが「アスクレピオスの杖」という、杖（つえ）に蛇（へび）が巻き付いたマークだからですね。
　Wikipediaによればこれは現在の「ＷＨＯ／世界保健機関（せかいほけんきかん）」*5のマークにもなっているそうです。
　あと割と最近のギリシャの紙幣（しへい）にも肖像（しょうぞう）が描かれていたとか、
　現在の医療（いりょう）関係でも「医神（いしん）」とも呼ばれているとか、すごい話が色々あります。

　またギリシャ神話内でもこの人物のすごいところは色々あって、ざっくり言うと

・まずアスクレピオスは太陽神「アポロン」*6の息子である
・死にゆく母親の胎内から（救出されて）生まれた
・賢者で有名な「ケイローン」*7に弟子入りした
・「イアソン」*8の「アルゴ―号の冒険」に参加した「アルゴナウタイ」である
・女神「アテナ」からもらった「メデューサ」*9の血を使って、死者を蘇らせることができるようになった
・実際にギリシャ神話の有名人を何人か生き返らせている

　…って感じですね。
　なんか「ケイローン」さんの紹介の時にも書きましたが、ライトノベルの主人公感というか、チート級の活躍ですね…。
　「アスクレピオス無双」みたいな。

　しかし、人間を蘇らせる行為には、反対もあったようです。
　Wikipediaによれば冥界（めいかい）…つまりあの世の神「ハデス」*10は、
　アスクレピオスの行為は「世界の秩序（「生老病死（しょうろうびょうし）」）を乱すもの」と主神「ゼウス」に抗議したそうで。
　ゼウスもこれに応じ、雷でアスクレピオスを殺してしまったそうです。

　しかしアスクレピオスの功績自体は認めらられ、彼は天の「へびつかい座」になったのだとか。

※

　当ブログでも「バナナ型神話」*11という、「人間が不死（ふし）*12を逃す話」について書いたように、
　神話の中では人間の「蘇り」や「不死」の試みは失敗・また中断することが多いですね。
　アスクレピオスの話もそんな感じがします。

　仮に「無限に蘇れる」と思うと、人間（というか筆者）は命を大事にしなくなりそうなので、
　「蘇り」まで行ってしまったアスクレピオスの行為は難しいところもありますが…。
　ただ「人を助けたい」、「治したい」という最初の理念自体は、尊いものかと思います。

　現代では、ちょうど「生命倫理（せいめいりんり）」や「延命治療（えんめいちりょう）」の難しさに関わりそうな話ですね。

　人間のやっていい領域の難しさと、まず人を癒したいという思い。
　「蛇」が「杖」に絡（から）んだ姿の「アスクレピオスの杖」からは
　そんな二つの問題の「絡み合い」をも、考えることができるかもしれません。

　まあそんな感じで～。

◆用語集
・アスクレピオス【ギリシャ神話】：
　ギリシャ神話の名医。
　本文でも書いたように、太陽神アポロンの息子。
　ただしWikipediaによれば母親「コロ－ニス」はアポロンの誤解によって殺されたとのこと。このエピソードには使いの「カラス」と「カラス座」が関わっていたりするので、興味がある方は調べてみるのも良いかもしれない。
　Wikipediaによればアスクレピオスが生き返らせた人物はは「カパネウス」、「リュクールゴス」、アテーナイ王テーセウスの息子「ヒッポリュトス」、「テュンダレオース」、「ヒュメナイオス」、ミーノースの子「グラウコス」など。
　ちなみにWikipediaによればアスクレピオスの子ども達もみんな医術に関わったらしい。その中には「ヒュギエイア」や「パナケイア」といった女神たちもいる。
　そしてやはり医術で有名な「ヒポクラテス」*13は彼の子孫という話もある。アスクレピオスの血、すごいな…。
　ちなみにアスクレピオスはゲーム『Fate/Grand Order』に出ていたりもする。
　関連用語：「閻魔帳（えんまちょう）」*14
　関連名称等：「ナイチンゲール」*15、「閻魔大王（えんまだいおう）」

・アスクレピオス【Fate】：
　ゲーム『Fate/Grand Order』に登場するサーヴァント。クラスはキャスター。
　所持スキルの名前は『医神EX』、『アポロンの子A』、『蛇遣いB』など、ギリシャ神話における彼のエピソードが盛り込まれている。
　担当声優は「鈴木崚汰（すずき・りょうた）」さん。
　関連用語：「ペストマスク」*16

・ヒッポリュトス【ギリシャ神話】：
　ギリシャ神話の登場人物。男性。
　Wikipediaによれば父は「テセウス」、母はアマゾーンの「ヒッポリュテー」、あるいは、「メラニッペー」か「アンティオペー」と、若干色んな可能性があるようだ。
　彼は女神「アルテミス」と森の中で狩猟生活をしていたのだが、継母（ままはは）の求愛を断り、その時に相手が自殺したことで、父テセウスに呪われて死んだ。
　そこを（アルテミスに頼まれて）生き返らせたのがアスクレピオス、ということらしい。

・ヒッポリュテー【ギリシャ神話】：
　ギリシャ神話に登場するアマゾーンの女王。
　上記の「ヒッポリュトス」の母という説もある。
　父は軍神「アレス」。
　妹に「ペンテシレイア」という人物もいる。　
　ちなみにWikipediaによればヒッポリュテーの死に方には色々説があるようで、①「ヘラクレスに殺された」、②「テセウスに殺された」、③「テセウスの仲間に殺された」、④「テセウスの側についてアマゾンに殺された」⑤「ペンテシレイアに誤って殺された」など、ざっくり確認するだけで５パターンくらいあった。

・ペンテシレイア【ギリシャ神話】：
　ギリシア神話に登場する女性。アマゾーンの女王。
　上記の「ヒッポリュテー」の妹。よって、彼女の父もまた軍神の「アレス」である。
　「トロイア戦争」*17の時にはトロイア側について戦った。が、英雄「アキレウス」*18に倒された。
　Wikipediaによれば「ハインリヒ・フォン・クライスト」作の戯曲『ペンテジレーア』というものもあるようだ。
　ちなみにこの「ペンテシレイア」という名前は、ゲーム『Fate/Grand Order』をプレイした方は聞いたことがあるかもしれない。
　関連人名等：「ヘクトール」*19、「アマゾネスCEO」【Fate】*20

・アスクレピオスの杖：
　アスクレピオスの杖。杖に蛇が巻き付いたものとして描かれる。
　これに似たものとしては、同じくギリシャ神話の神「ヘルメス」が持つ「ケリュケイオン」という杖もある。

・ケリュケイオン【ギリシャ神話・アイテム】：
　Wikipediaによればギリシャ神話の神ヘルメスが持つ杖。
　こちらも杖に蛇が巻き付いているが、こちの蛇は２匹であり、あと杖に翼がついている。
　ラテン語では「カドゥケウス」ともいう。
　ちなみに日本のゲームソフトには『超執刀カドゥケウス』などの医療ゲームもある。

・ヒュギエイア（Hygieia）【ギリシャ神話】：
　ギリシャ神話の女神。
　アスクレピオスの娘の一人。父親と同様に蛇を連れ、また杯（さかずき）を持っている。
　Wikipediaによれば彼女の杯は「ヒュギエイアの杯」と呼ばれ、杯に蛇の絡んだ形で描かれるらしい。これは現在の「薬学（やくがく）」のシンボルになっているようだ。
　またヒュギエイアの名前は「健康（けんこう）」を意味し、これは英語の「hygiene（ハイジーン）／清潔（せいけつ）、衛生（えいせい）」の語源とされるようだ。

・衛生（えいせい）：
　健康（けんこう）*21を守ること。またそのために清潔にし、病気を防ぐことなど。
　英語では「hygiene（ハイジーン）」。中国語では「卫生（ウェイシャン）」*22など。
　「公衆衛生（こうしゅうえいせい）」と言った言葉もある。

・パナケイア（Panakeia）【ギリシャ神話】：
　ギリシャ神話の女神。アスクレピオスの娘の一人。
　Wikipediaによればその名前には「全てを癒す」の意味があり、中世の錬金術師たちが「エリクサー」や「賢者の石」の材料と考えた霊薬（れいやく）の名ともなったらしい。
　また今日でも「万能薬（ばんのうやく）／panacea（パナシーア）」の意味で使われるとのこと。

・万能薬（ばんのうやく）【薬品・アイテム】：
　すべてを治す薬、または効果範囲が広い薬。
　英語では「cure‐all（キュアオール）」や「panacea（パナシーア）」。
　ゲームなどでは「ステータス異常をすべて治す」アイテムとして出てくることも多い。ただ大抵の場合「死亡」状態は治らない。それを直すのは「蘇生薬（そせいやく）」といったもの仕事であることが多い。
　実際、全ての病気を治す薬があるかは不明だが、それぞれの薬は薬効（やっこう）や副作用（ふくさよう）があったりするので、「とりあえずすべての病気に使って問題ない薬」があったらそれはそれで重要かもしれない。
　ちなみにネット上のホラー怪談「SCP」*23には、「SCP-500　Panacea」というものもあるようだ。

・蘇生（そせい）：
　死にそうな生物を蘇らせること。
　関連用語：「お屠蘇（おとそ）」*24、「ソテツ（蘇鉄）」*25

・トビカガチ【モンハン】：
　ゲーム『モンスターハンター：ワールド』に出てくるモンスター。
　外見は獣（けもの）…というかイタチ（鼬）と爬虫類（はちゅうるい）を混ぜたような感じ。
　毛（け）も多いが、顔は蛇っぽくウロコもある様子。
　身体（からだ）に帯電（たいでん）…つまり電気（でんき）を帯（お）びて自分を強化（きょうか）するのが特徴。

benkyoumemo.hatenablog.com

*1:「死者（ししゃ）」については 5/25 英＋歴：「聖霊（せいれい）」と死者、鬼と人～色んなゴースト～ - のっぽさんの勉強メモを参照。

*2:「ギリシャ神話」やギリシャ神話の主神「ゼウス」については 12/5 英語：ミュージック(music)の由来とギリシャ神話 - のっぽさんの勉強メモを参照。

*3:「蛇（へび）」については 1/29 国語：蛇（へび）／「虫へん」の「虫」は（元々）「昆虫（こんちゅう）」じゃない！？ - のっぽさんの勉強メモを参照。

*4:蛇の古い名前「かがち／カガチ」については 8/27 理＋英：「鬼灯（ほおずき）」は「提灯（ちょうちん）」で「トマト」ですか？～鬼灯の色んな呼び名～ - のっぽさんの勉強メモを参照。

*5:「WHO」こと「世界保健機関（せかいほけんきかん）」については 12/1 生＋理：世界エイズデーの話～「エイズ（AIDS）」と「HIV」～ - のっぽさんの勉強メモを参照。

*6:ギリシャ神話の太陽神「アポロン」については 3/10 理科：太陽神（たいようしん）、月へ行く！～アポロ１１号と「アポロ」～ - のっぽさんの勉強メモを参照。

*7:ギリシャ神話の賢者「ケイローン」については 9/6 英＋歴：色んな「demi（デミ）」の話！～亜人、半神、あとデミグラス～ - のっぽさんの勉強メモを参照。

*8:ギリシャ神話の英雄「イアソン」については 2/21 歴史：英雄「イアソン」と頼れる仲間たち！？～アルゴ―号の冒険、そしてその末路～ - のっぽさんの勉強メモを参照。

*9:ギリシャ神話の怪物「メデューサ」については 4/24 英語：お遊び／中二病的な英文例～あいつは魔王で魔眼使い～ - のっぽさんの勉強メモを参照。

*10:ギリシャ神話の冥界の神「ハデス」については 6/15 国語：「魔法（まほう）」・「プロレス」・「選挙演説」！？～色んな説明（せつめい）の仕方～ - のっぽさんの勉強メモを参照。

*11:「バナナ型神話」については 7/23 国＋英：色んな「つみ」の話！～将棋（しょうぎ）、花摘み（はなつみ）、あと『ツムツム』？～ - のっぽさんの勉強メモを参照。