歴史+英語の話ー。
「余(あま)った女とは何事だ!」と思ったらすみません。昔の呼び名についての紹介です。
昔はヨーロッパで一般的だったらしい、女性の家庭教師(かていきょうし)*1、
「ガヴァネス(governess)」という職業についての話です。
(※本記事中、人名等敬称略)
前置き。
昨日「コンパニオン」*2という語を調べている中で、
ふと見つけた「ガヴァネス」という単語が気になったので、調べてみました。
※
まず「ガヴァネス(governess)」とは、ざっくり言うと女性の家庭教師(かていきょうし)みたいですね。
子どもに読み書きなどを教えていたそうです。
動詞の「govern(ガヴァーン)」が「影響(えいきょう)する」、「制御(せいぎょ)する」、「左右する」と言った意味なので、
そこに女性を表す「-ess」を付けて、「governess」という感じかと思われます。
「子どもに影響を与える女性」→「教育(きょういく)する女性」て感じですかね。
この「ガヴァネス」という言葉、今ではあんまり聞かない印象ですが、
Wikipediaによれば、「第一次世界大戦(だいいちじせかいたいせん)」前までは、ヨーロッパでは一般的な存在だったみたいです。
(今では珍しいのですが、サウジアラビアやオーストラリアでは存在するとも)
ただガヴァネスの働く環境(かんきょう)は、あまり恵まれていなかったようです。
Wikipediaによれば昔(1840年代~)は、女性が働くのは「はしたない」とされ、
また相手の家庭においても、使用人でもなく、家族の一員でもないという微妙なポジションだったそうで。
そのことから「余(あま)った女」と呼ばれたりしたのだとか。
手元の辞書によれば、ガヴァネスは普通「住み込み」*3で働くらしいのですが、その状態で「余った」扱いはきつそうですね…。
でも一方で、有名なガヴァネスも多く存在するようです。
例えば三重苦*4を背負った有名人に「ヘレン・ケラー」という方がおられますが、
Wikipediaによれば、彼女を教えた「アン・サリヴァン」という方は、この「ガヴァネス」であったそうです。
また放射線(ほうしゃせん)の研究でノーベル賞を取った「マリ・キュリー」(いわゆる「キュリー夫人」)も、研究の前に「ガヴァネス」をしていた期間があるそうです。
あとはガヴァネスが出てくる有名な小説や漫画などが色々あるようですね。
※
今と昔では価値観も違いますが。
ガヴァネスに関わる方々が世界を豊かにしてくれていることを考えると、
「余った女」とは、とても言えない感じがしますね。
(※もちろん、それ以前に「余った女」という呼び方や尺度が失礼かと思いますが。それは別にしても)
逆にかつてのガヴァネスのように、今「余った」とか「要らない」と言われている人・ものが、
未来の世界では見直され評価される…、ということもあるかもしれません。
先述のように「ガヴァネス(governess)」には「govern(ガヴァーン)/影響する」という言葉が入っています。
特に女性の方は何かをやってみると、
「世界に影響を与える女性(governess)」という意味での「ガヴァネス」になれるかも?
(※そもそもそう呼ばれたいかは人によりますが)
まあそんな感じで~。
追記
ちなみにWikipediaによれば、ガヴァネスが担当したのは主に女の子らしいです。
男の子は担当したとしても幼少期だけで、成長したら学校や「チューター(tutor)」に渡すなどしたようですね。
◆用語集
・ガヴァネス(governess):
関連用語:「ジェントルウーマン」*5、「レディ(lady)」*6、「レディズコンパニオン」、「指南役(しなんやく)」*7、「オールド・ミス」*8、「old maid(オールド・メイド)」、「婚期(こんき)」
・govern(ガヴァーン、ガヴァン、ガバン):
「国などを治める」、「統治(とうち)する」、「影響を与える」、「左右する」、「支配(しはい)する」と言った意味の英単語。
関連用語:「政府(せいふ)/government」*9、「政権(せいけん)/governmentなど」*10、「知事(ちじ)/governor」*11、「公務員(こうむいん)/government workerなど」*12
*1:「家庭教師(かていきょうし)」や「チューター」については 1/21 英+学:「家庭教師(かていきょうし)」と「守護神(しゅごしん)」の関係!? ~「tutor」と「tutelar」~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*2:「コンパニオン」や「レディズコンパニオン」については 2/4 英+理他:それは「コンパニオン(companion)」の「植物(しょくぶつ)」ですか? ~「コンパニオンプランツ」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*3:「住み込み(すみこみ)」とは相手の家に住んで働いたりすること。
*4:この場合は「目が見えず、耳が聞こえず、話すことができない」ことを指します
*5:「ジェントルウーマン」については 10/13 英語:ジェントルマンと「ジェントルウーマン(gentlewoman)」の話! - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*6:「レディ(lady)」については 12/3 英語:色んな「レディ」の話 ~貴婦人(きふじん)になる準備はできていて?~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*7:「指南役(しなんやく)」については 2/22 国+歴:「指南(しなん)」は南(みなみ)を指しますか? ~「指南」と「指南車(しなんしゃ)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*8:「オールド・ミス」、「old maid(オールド・メイド)」、「婚期(こんき)」については 1/27 ゲーム+英他:「ババ抜き」は「メイドさん」ですか? ~「ババ抜き/Old Maid(オールド・メイド)」と「オールド・ミス」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*9:英語で「government」とも言う「政府(せいふ)」については 5/3 社会:政治(せいじ)ってなんだろう?(メモ) - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*10:英語で「government」ともいう「政権(せいけん)」については 12/26 社+国:その「政権(せいけん)」はどこ産ですか? ~「政権(せいけん)」や「政府(せいふ)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*11:英語で「governor」ともいう「知事(ちじ)」については 2/5 歴史:「王様の耳」は超すごい!? ~「王の耳」と「ダレイオス1世」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*12:英語で「government worker」ともいう「公務員(こうむいん)」については 7/5 英+学:「職業(しょくぎょう)」に関わる英語7つ+α! ~今週の英語セブン~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。