家庭科(生活)+英語+地理の話ー。
「七面鳥(しちめんちょう)」の英名である「ターキー」と、
「トルコ」*1の英名「Turkey(ターキー)」についての話です。
遅くなってしまったので簡単に。
前置き。
花の図鑑を読んでいて、チューリップの原産が「トルコ」である、という表示を見まして。
そういえば、英語では「トルコ」のことを「Turkey(ターキー)」と言ったりするのですが、
クリスマスによく食べる「七面鳥(しちめんちょう)」も「ターキー」と言ったりします。
これら両者の関係が気になったので調べてみました。
※
まず「七面鳥(しちめんちょう)」は「シチメンチョウ属」の鳥類であり、
アメリカなどでは「感謝祭(かんしゃさい)」*2や「クリスマス」に「七面鳥の丸焼き」を食べるようです。
アメリカ・カナダの南部、メキシコなどに生息する鳥のようですね。
で、Wikipediaによればなので北アメリカ原産なのですが、
どうも昔は「七面鳥」は「ホロホロチョウ」という鳥と混同(こんどう)*3された、つまり一緒の扱いにされちゃったみたいですね。
で、ホロホロチョウは「トルコ(Turkey)」経由でヨーロッパに伝わったので、
これと混同された七面鳥に、「トルコ」の呼び名である「Turkey(ターキー)」という名前がついたようです。
じゃあホロホロチョウの方が本来「ターキー」と呼ばれるべきなのか…というと、そうでもないようです。
というのも、ホロホロチョウの生息域はアフリカのようなので。
英名も「Guinea fowl(ギニア・ファウル)」という、アフリカの国名「ギニア」が入っていたりします。
(ちなみに意味は「ギニアの鳥」というような意味のようです)
つまり「ターキー(七面鳥)」は「ターキー(トルコ)」原産でないわけですね。
さらに言えばホロホロチョウの方は「ターキー(七面鳥)」でもないうえに「ターキー(トルコ)」原産でもないと。
なかなかシュールな話です。
このように「勘違いでつけられちゃった名前」というのも、古いものには結構あります。
’ (「西インド諸島」とかもそんな感じですね)
それらに注意するついでに、あと「何故間違えたのか」の理由も知っておくと、ちょっと面白いかもしれません。
まあそんな感じで~。
◆用語集(人名等敬称略)
・七面鳥(しちめんちょう):
英語では「turkey(ターキー)」。
ちなみにWikipediaによれば、雷の逸話でも有名な「ベンジャミン・フランクリン」はアメリカの国鳥として、「ハクトウワシ」でなくこの「七面鳥」を推していたらしい。
ちなみにアメリカの慣用句に「ターキー・シュート(七面鳥撃ち)」というものがあるらしい。これはまあ「簡単なこと」を表す言葉のようなのだが。
これに関して、太平洋戦争時の「マリアナ沖海戦」にて「マリアナの七面鳥撃ち」と呼ばれるほど日本側が被害を受ける、ということがあったようだ。そしてゲーム『艦隊これくしょん』*4ではキャラクター「瑞鶴(ずいかく)」*5がこの「七面鳥」という言葉を嫌がっているのだが、このマリアナの一件に関係があるようである。
関連用語:「鵲(かささぎ)」*6
・ホロホロチョウ:
Wikipediaによれば、キジ目・ホロホロチョウ科・ホロホロチョウ属に分類される鳥類。
カタカナで書くと分かりにくいが、「ホロホロ鳥」であって「蝶(ちょう)」*7ではないことに注意。「モンシロチョウ(紋白蝶)」などとは違う訳である。
学名は「Numida meleagris(ヌミダ・メレアグリス?)」。これの後半はギリシャ神話の英雄「メレアグロス」に由来するらしい。
・メレアグロス:
ギリシャ神話の英雄。
「カリュドーンの猪狩り」の中心人物。これについては後述の用語を参照。
過去記事で紹介した「アルゴナウタイ」*8、つまりアルゴ―号に乗った英雄たちの一人でもあるらしい。
ちなみに奥さんの名前は「クレオパトラー」だが、これはエジプトの「クレオパトラ」とは別の人。
またメレアグロスの妹「デーイアネイラ」は英雄「ヘラクレス」の奥さんになった女性でもある。
Wikipediaによれば彼が小さいころに、運命の3女神「モイライ」*9が来て、「この子は高貴な人物になる」と予言をしたらしい。
また近くの暖炉にある薪について「この薪が燃え尽きない内はメレアグロスは生きている」という予言も受けた。母「アルタイアー」はすぐに薪を消し、燃え尽きないように隠しておいた。
これでメレアグロスは安全になりそうなものだが、「カリュドーンの猪狩り」の際に彼が母アルタイアーの兄弟を殺してしまったことで、母は怒る。彼女によって、薪は炉に投げ込まれ、メレアグロスは死を迎えることとなる。つまり母によって子が死に至るという哀しい話である。
そういえば何故ホロホロ鳥とメレアグロスが関係あるのか?とWikipediaを読んでいたら、
下記の「カリュドーンの猪狩り」のせいでメレアグロスが死んだ後に、女神アルテミスが彼の姉妹をホロホロ鳥の姿に変えた、ということらしい。
…ギリシャ神話で神に関係するものに手を出すと、親族もかなりの率でひどい目にあう、という例である。
ちなみに北欧神話の「ノルナゲスト」という人物は、「この蝋燭が消えると死ぬ」という似た予言を受けていたりする。
・「カリュドーンの猪狩り」
ギリシャ神話の出来事。
「カリュドーンの猪狩り」の話は簡単に言うと、
①メレアグロスの父「オイネウス」が生贄を捧げるのを忘れて女神「アルテミス」*10が怒った
②超強い「猪(いのしし)」*11を野に放った(いわゆる「カリュドーンの猪」)
③英雄が集まってそれを退治した
みたいな感じの話である。
ちなみにこの退治には過去記事で紹介した女射手「アタランテ」も参加しており、メレアグロスは彼女に好意を持っていたようだ。これがのちのち重要になる。
なんとか猪は退治できたのだが、その猪の皮を巡って問題が起きた。
メレアグロスが、「最初に猪に攻撃したから」ということでアタランテに皮をあげようとすると、それに異議を唱える者が出た。
そしてエスカレートしてやがて戦いになり死人も出て…、その結果、メレアグロスは呪われて死んでしまったらしい。あとこの出来事はアタランテが結婚を避けるようになる一因にもなったとか。
猪の退治でなく、その後の処理で争いが起きてしまうとは、なんとも哀しい話である。
ちなみにゲーム『Fate』シリーズのキャラクター「アタランテ」のスキルに「カリュドーン」や「猪」といったものがあるのは、この猪狩りのエピソードからのものと思われる。
関連人名等:「アドニス」、「ディルムッド」*12
・ノルナゲスト:
北欧神話の登場人物。北欧の「サガ」(物語)に謳われる人物。
彼が生まれたときに3人の女神「ノルン」がやってきて、2人から才能などをもらうが、アクシデント3人目から呪われてしまう。
曰く、近くに会った蝋燭を指して「この蝋燭が消えるよりは長く生きられない」と。
上記の「メレアグロス」とかなり似た話である。
ただこちらはその後蝋燭をうまく管理することで、300年くらい生きたらしい。すごい。なんかゲームで言うところの「チ-ト」っぽい
彼は北欧神話の「シグルズ」などと一緒に戦ったりしつつ、色んな英雄や有名人とかかわったようだ。
ノルウェー最初の統一王「ハラルド美髪王」こと「ハーラル1世」と過ごしたりもしたらしい。
最後は「オーラヴ王」という人物に誘われてキリスト教の洗礼*13を受けることにしたらしい。
でも古い神々を怒らせないか、とノルナゲストが迷っていると、
王から「キリストが守ってくれるから大丈夫!例え蝋燭が燃え尽きたって大丈夫!」みたいなことを言われて、
実際に蝋燭を燃やして、燃え尽きたら、ノルナゲストも死んでしまったらしい。…ちょっと残念な話である。
しかもこのことに対してオーラヴ王は、「ノルナゲストが心の底からキリストを信じていなかったからだ」と言ったらしい。…それなら迷っている状態で火をつけない方が良かったし、そもそも誘ったのも安全を保障したのもあなたでしょう…とちょっとツッコミたくなってしまう話である。
・シグルズ:
北欧神話の英雄。「シグルド」とも。
『ニーベルンゲンの歌』の主人公「ジークフリート」と起源を同じくするが、その物語などは違うものになっており、結果的に違う人物である。
邪竜「ファフニール」(ファーヴニル)を退治したことや、戦乙女「ブリュンヒルデ」との悲恋などで有名。
・ハーラル1世:
ノルウェーの最初の統一王。
子どもの1人に「血斧王」と呼ばれた「エイリーク1世」がいる。
ちなみにWikipediaによれば親衛隊の一部は「ベルセルク(狂戦士)」*14であったともされる。
関連人名等:「ハーラル3世」*15
・エイリーク1世:
ノルウェーの王。上記の「ハーラル1世」の子。
ゲーム『Fate/Grand Order』に出たりしているので、こちらで知っている方もいるかもしれない。
・ハクトウワシ:
タカ目タカ科に属する鳥類。
英語では「Bald eagle(バルド・イーグル)」。
アメリカ合衆国の国鳥でもある。
ちなみにゲーム『アズールレーン』においてはアメリカの軍艦を擬人化したキャラクター「ヨークタウン」や「エンタープライズ」が、このハクトウワシを伴っているようだ。
・ギニア共和国;
西アフリカ西端に位置する国。
首都は「コナクリ」。
Wikipediaによれば北に「セネガル」、北西に「ギニアビサウ」、北東に「マリ」、南に「シエラレオネ」、「リベリア」、南東に「コートジボワール」と国境を接しており、西は大西洋に面している。
昔はフランスの植民地であった。
*1:「トルコ」については 4/7 歴史:イスタンブールはビザンティオンですか? ~はい、コンスタンティノープルです~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*2:「感謝祭(かんしゃさい)」については 12/23 こころ+諸外他:「感謝(かんしゃ)」を表す外国語7つ+α! ~今週の外国語セブン~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*3:「混同(こんどう)」については 4/5 理+韓他:「ポッサム」は「ポッサム」じゃない!? ~「Possum(ポッサム)」と「보쌈(ポッサム)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*4:ゲーム『艦隊これくしょん』については 12/3 地理+理科:日本とか、浮力とか、ソシャゲとかの話 - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*5:旧日本海軍の空母「瑞鶴(ずいかく)」については 2/9 歴+ゲーム:美少女から歴史を学ぶ話!? ~ローソン・艦これ・「翔鶴(しょうかく)」・「瑞鶴(ずいかく)」~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*6:日本では割と鷺(さぎ)に間違えられているっぽい鳥「鵲(かささぎ)」については 11/26 国+理他:「カササギ」は「サギ」の一種…じゃない!? ~鳥(とり)の「鵲(かささぎ)」と「鷺(さぎ)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*7:昆虫の一種「蝶(ちょう)」については 4/15 生+国:「ドア」には「蝶(ちょう)」が止まってますか? ~「蝶番(ちょうつがい)」と「蝶(ちょう)」と「ドア」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*8:「アルゴナウタイ」や「アタランテ」については 2/21 歴史:英雄「イアソン」と頼れる仲間たち!? ~アルゴ―号の冒険、そしてその末路~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*9:ギリシャ神話の「モイライ」については 1/4 国+英+歴:その文法を「キャラ化」する!? ~「時制(じせい)」と「運命の三女神」~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*10:ギリシャ神話の女神「アルテミス」については 3/10 理科:太陽神(たいようしん)、月へ行く! ~アポロ11号と「アポロ」~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*11:「猪(いのしし)」については 1/6 社会:「豚(ぶた)」と「タブー(taboo)」の話! ~あと「猪(イノシシ)」を添えて~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*12:やはり猪絡みで死んでいるギリシャ神話の「アドニス」やケルト神話の「ディルムッド」といった人物らについては 2/11 歴史:「イケメン」過ぎると「猪(いのしし)」が来る!? ~ギリシャの「アドニス」、ケルトの「ディルムッド」~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*13:「洗礼(せんれい)」については 3/28 国+社他:「フォント」といったら「洗礼盤(せんれいばん)」ですか? ~色んな「font(フォント)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*14:「ベルセルク」については 5/25 ゲーム+歴:勇気(ゆうき)、元気(げんき)、狂気(きょうき)!? ~狂戦士(きょうせんし)の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*15:ノルウェー王「ハーラル3世」については 4/14 社会:「スコットランド」と「富士急ハイランド」の関係!? ~「ハイランダー」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。