国語+社会(歴史+地理)の話ー。
別に「上京(じょうきょう)」する必要はないのですが、人によって行き先は違うかもしれません。
現代でも使う「上京(じょうきょう)」という言葉に、
実は「東京(とうきょう)」*1や「京都(きょうと)」といった行き先のパターンがありうるかも、という話です。
※都会(とかい)や田舎(いなか)といった言葉を使いますので、ちょっと差別(さべつ)に関する話になるかもしれませんが、
言葉自体をテーマにしたいということで、特に何かを攻撃したいわけではありません。ので悪しからず。
でもご不快に感じられた場合はすみません。
前置き。
日本語の中に「上京(じょうきょう)」という言葉があります。
これは現代では「田舎(いなか)から都会(とかい)に行く」、特に「東京(とうきょう)に行く」といった意味合いで使われている印象です。
何故「上る」(あがる、のぼる)という言葉が使われているかと考えると、
暗に田舎や地方(ちほう)*2が「下」で、都会や「東京」の方が「上」という意味合いが込められていそうで、若干危ういネタですが。
しかし「上京」が昔からこの意味…つまり「東京に行く意味」だったか、と言うとそうでもないようです。
手元の国語辞典によれば、昔は「上京」という言葉は「京都(きょうと)に行く」ことを指していたのだとか。
これは、昔は京都やその近くが政治(せいじ)の中心地だったからですね。
天皇家(てんのうけ)の人々が長くいましたし、「平城京(へいじょうきょう)」とか「平安京(へいあんきょう)」とかが有名でしたし。
なので京都こそが「都(みやこ)」であり、「上京」とは、昔は「京都に行く」ことを表していたと。
むしろ「東京」の方が中心になったのは、「江戸時代(えどじだい)」や、東京と改名(かいめい)した「明治時代(めいじじだい)」くらいから、という感じかもしれません。
(「鎌倉時代(かまくらじだい)」は東京でなく神奈川県(かながわけん)の「鎌倉(かまくら)」に幕府(ばくふ)が置かれてましたし)
とすると、ここ400~200年足らずのことと言えるかもしれませんね。
(江戸幕府ができたのが1603年くらいからで、明治維新のきっかけになったペリー来航が1853年なので)
西暦(せいれき)「2000年」の5分の1足らず、と言うとなかなか新鮮な気分です。
※
それをどう考えるかはともかくとして、
「都(みやこ)」の位置(いち)によって「上京」の先が変わるかも、というのは面白い話です。
(普段のお住まいはともかく)あなたがどこに「上京」するか、というのもそれによって変わるわけですね。
たとえば今でも埼玉県(さいたまけん)に「さいたま新都心」と呼ばれる場所がありますが、
そこが新しい首都(しゅと)になったら、「上京」とは「埼玉県の方に行くこと」になるかもしれません。
もっとも、「埼玉県」の名前には「京」の字が入っておりませんので、
「上京」のまま言葉を使うのか、「埼玉」に対応したまた新しい言葉が作られるのか…。
考えてみると、なかなか興味深いかもしれませんね。
まあそんな感じで~。
追記
昔、京都に行く場合は「上洛(じょうらく)」という言葉も使っていたようです。
戦国時代(せんごくじだい)がテーマの漫画だとかだと、武将(ぶしょう)たちがすごい京都に「上洛」したがってたりしますが、
これは京都が重要な土地であった、ということですね。
(詳しく言うと「足利幕府(あしかがばくふ)」や「将軍家(しょうぐんけ)」の話が関わってきて面白いのですが、長くなるのでまた今度)
ちなみに昔は「東下り(あずまくだり)」という言葉もあったようです。
これは京都から東国(とうごく)…東の地方や国へ行くことですね。
何故「下る」という言葉が使われているのかというと、
昔、東国の方は(比較的)わりと発展(はってん)が遅れていたりしたようなので、
京都の方から見ると「下」の方へ行く…つまり「下る」とみなされていたようです。
ただ、今では東の「東京」が日本の首都ですし、この言葉はあまりしっくり来ないかもしれませんね。
ちなみに日本史で習う「征夷大将軍(せいいたいしょうぐん)」という役職も、東国や東北地方などに関係するものであったりします。
追記2
ちなみにネットによれば「上京」という名字の方もいらっしゃるらしいです。
もっとも「上京(かみきょう)」という読み方らしいですが。
「上京(じょうきょう)」という言葉を思い浮かべながら見ると、なかなか面白い名字ですね。
追記3
ちなみに手元の和英辞典にも「上京」に関して載っていました。
それによれば英語にも「首都は高いところにある」という意識があり、
例えばイギリス*3の首都である「ロンドンに行く」ことを「go up to London(ゴー・アップ・トゥ・ロンドン)」と言ったりするらしいです。
「up(アップ)」*4という言葉には「上の方」とか「上げる」といった意味があるので、まさに「上京」的な感じですね。
ただ同時に「北が高く南が低い」という感じ方もあるようで。
その場合「go down to London(ゴー・ダウン・トゥ・ロンドン)」という言い方もするらしいです。
(ちなみにロンドンはイギリスではわりと南の方にあります)
「down(ダウン)」は「下の方」とか「下がる」といった意味合いなので、こちらは「ロンドンへ下(くだ)る」といった感じですね。上のものとはちょうど真逆の意味になります。
確かに地図でも北の方を「上」と呼んだりしますしね。
「上」/「下」、「上る」/「下る」というのも、立場や見方、状況によって結構変わるのかもしれません。
◆用語集
・上京(じょうきょう):
関連用語:「方言(ほうげん)」*5、「都」*6【漢字】
・上洛(じょうらく)
*1:「東京(とうきょう)」や「東京都(とうきょうと)」については 3/28 地理:新宿(しんじゅく)の話 ~名前と甲州街道(こうしゅうかいどう)、発展と関東大震災~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*2:「地方(ちほう)」については 8/30 地+英:「市区町村(しくちょうそん)」などに関わる英語7つ+α! ~今週の英語セブン~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*3:「イギリス」や「ロンドン」については 6/11 地理:テストによく出る国名・都市名!?(仮) - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*4:「up(アップ)」や「down(ダウン)」については 12/4 技+英:パソコン用語から英語を学ぶ! ~「アップデート(update)」と「ダウンロード(download)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*5:「方言(ほうげん)」については 4/25 社+生:「バスクチーズケーキ」と「バスク紛争」!? ~「バスク地方」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*6:漢字の「都」については 9/25 国+社:「都(みやこ)」は「都合(つごう)」が良いですか? ~「都合」、「都」、「都会(とかい)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。