のっぽさんの勉強メモ

主に中学の学習内容と、それに絡みそうな色んなネタを扱っています。不定期更新ですー。あ、何か探したいことがある場合は、右の「検索」や記事上のタグやページ右にある「カテゴリー」から関係ある記事が見られたりします。

12/4 国?+こころ:自作物語『悲しみくらべ』

 国語(?)+こころの話ー。


 昨日物語を書いた影響で、他のネタが思い浮かんだので、
 また自作物語『悲しみくらべ』をメモです。


※長文の上に雑文なので注意



☆タイトル:『悲しみくらべ』



 あるところに、男が一人おりまして。
 ああ、自分は不幸だ不幸だ、と思っておりました。
 ちょっとのことでも、とても悲しく感じる質(たち)なのです。


 なので男は

「おお、俺は世界一かわいそうな男である。
 俺の悲しみは、世界一深い」

 などと嘆いて、

 まるで世の悲しみを、一身に背負ったかのような。
 そんな顔で暮らしておりました。



 さて、広げた話が大きすぎたのか、
 男の元へ、大勢の人がやってきました。
 そしてくちぐちに「悲しみ」をしゃべります。


「私が世界一可哀そうである。
 私は恋人にフラれたのだ」

「僕は家も財産を失った。
 僕こそが世界一悲しみを抱えている」

「儂なんて行く先々で不幸に会うのだ。
 儂にかなう者はいない」


 色んな人がやってきて、思い思いにしゃべります。

 みんな負けてなるものか、と必死になって、
 互いに悲しみをくらべ合います。


 言うなれば「悲しみくらべ」です。



 それを見て男は、
 えらいことになった、だがやはり世界一悲しいのは俺だろう、
 などと勝手に考えておりましたが。


 ふと見れば、言い合う人の輪に加われず、
 控えめに立っている人が一人おりました。



 男は気になって

「あなたはあの『悲しみくらべ』に加わらないのですが」

 などと聞いてみますと。


 その人はびっくりまごまごしながら、

「いや私は口下手で。皆さんにくらべて上手くしゃべれない。
 聞いてもらいたいと思いやってきましたが。
 大したことは無いですし、話の邪魔はしないでおきます」


 などと口早に言って、また控えめに引っ込みました。


 男は、はあまあそうですか、好きにしたらいいですよ、
 などと答えて、しばらく放っておきましたが、
 その人がそわそわしているのは止みませんでした。


 我慢してても、喋りたい気持ちは消えないようです。


 男は、別にいい人ではありませんでしたので、
 そんなに助ける気もありませんでしたが。
 その人が、いつまでもそうしているのに、イライラしてきて、
 ついにこう言いました。


「何をしているのです。
 別にあなたの悲しみが世界一でなくたっていいでしょう。
 それがどうだなんで、聞いた人が決めること。
 まずは喋りたいことがあったら喋りなさいな。
 でないと、ずっとそのままですよ」


 そしてそのまま、悲しみをくらべ合っている人々に向かっても呼びかけました。


「おおい、おられる皆々様方。
 俺たちはまずこの人の、
 悲しみ聞くべきじゃないのかね。
 この人はずっと待っておられるのだ。

 好き放題にやっておられるが、
 ここでこうしていることで、
 また悲しみが生じているのじゃないのかね。
 俺たちはそれを良しとするのかい…」


 などと大声で言いました。


 それを聞いて人々は、
 こいつめ、何をえらそうに、と思いましたが
 まあ一理はあるか、と思って黙りました。




 さて、急に生まれた静けさの中で、
 みんなが、控えめな人に注目しまして。


 その人は、恐る恐るしゃべり始めました。


「ええと、私の悲しみなど、大したことは無いのですが。
 本当に、大したことは無いのですが。


 私は、声も小さく、口下手で、
 人中で、話せないことが悲しみでした。

 自分が話せば、他の人の、
 楽しい話などを、邪魔してしまうのではと。
 そう思うと、どうにも怖かったのです。


 でも、ずっと喋りたかったのです。
 でも、ずっと寂しかったのです。


 けれど、今日ここで皆さんの話を聞けましたし、
 今、こうやって耳を傾けてくださってる。
 本当にうれしく思うのです。


 だから、私の悲しみは、
 前にくらべて、減りました。


 もう本当に大したことは無いのです。


 ……ありがとうございます。
 私の話は終わりです」

 と言って、頭を下げました。



 それを聞き終えて、みんなは
 なにか、嬉しいような、恥ずかしいような、
 申し訳ないような気分になりました。



 その様子を見て、男はしたり顔で頷き、

「なるほど、やはり悲しみなどくらべるものではない。
 これでみんなも愚かさが分かったろう」

 などと締めくくろうとするのですが。


 さすがにそれは人々から怒られて、


「おいおい、お前の始めたことだろう」
「何だお前は偉そうに」
「そもそも話が大きすぎるのだ」


 などとめちゃめちゃに言われまして、
 男はひいひい、となりました。


 何とも格好がつきませんが。



 それを見てた控えめな人が、苦笑いをして。
 それはやがてみんなにも伝わって、
 男もなんだか笑けてきました。


 和やかな笑いが、かすかに満ちました。




 みんなで何かを分かち合った気もしたので、
 その場の悲しみは、前にくらべて、


 少しだけ減ったのやも、しれません。





 そんな話でございました。



                  <終>





 まあそんな感じで~。



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