国語+社会+生活の話―。
「友情と愛情には、違う『好き』がある…」的な話ではありません。
手に持って地面を掘る*1農具①「鋤(すき)」と、
牛や馬に引かせて地面を掘る農具②「犂(すき)」の話を。
「音も目的も似ててややこしい!」という強い思いを込めて。
内容が長くなりそうなので、本文は軽めに。
前置き。
まず「鋤(すき)」とは、地面を掘り起こすための道具、農具(のうぐ)ですね。
ざっくり言うと「シャベル」*2や「スコップ」に似た形の物です。
農業(のうぎょう)*3関係などで、よく目にする印象ですね。
で、農具…農業関係の道具の「すき」には、まだ他もありまして。
それが②「犂(すき)」というものですね。
この「犂」は牛*4や馬*5に引かせる物で、やはり地面を掘り起こす、耕す…という道具のようです。
(ちなみにWikipediaでは「プラウ」という名前でページにまとめられていました。
世界中で、だいぶ昔からあったようです)
なので①「鋤(すき)」と、②「犂(すき)」、
かなり目的も似ている農具が、同じ名前で存在しているわけですね。
…さて、では何故今回、このテーマを取り上げたかと言うと、
ぶっちゃけ「調べててややこしかった」からですね。
というのも、筆者の手元の漢和辞典には、
いくつかの字の意味の欄に「すき。農具」と載っていたりしたのですが。
(※これの詳細については後述の「追記」で)
…筆者は最初、全部①「鋤」の方だと思っていたのですが、
よく考えると②「犂」の方の可能性もあるわけですね。
しかし「すき。農具」という記述だけだと、どちらか判別しきれない訳です。
なのでこれら①「鋤」と②「犂」という字があるために、
調べ物において「この『すき』とその『すき』は違うの…!?(ていうかどれが「鋤」か「犂」かも分からない)」という悩みが、筆者に生まれてしまった…という訳ですね。
…字面だけだと何か恋愛ものっぽいですが。
※
まあ上記のような調べ物は、なかなかしないかもですし、
また現代は、昔より農業に関わる機会も減っているので、
①「鋤」と②「犂」を間違えて困る…ということは少ないかもですが。
でも、もしあなたがどこかで農業に関わった時や、
あるいは歴史の授業などで、「すき」という語を聞くことがあれば。
「それは①『鋤(すき)』か②『犂(すき)』か、どっちの話ですかな…?」と考えてみると、
何だかデキる人っぽくて、ちょっと楽しいかもですね。
まあそんな感じで~。
追記
ちなみに、なぜ今回「鋤(すき)」や「犂(すき)」の話をしたのかというと。
漢和辞典での「銛(せん)」*6の字の説明に、何故か農具(のうぐ)の「すき」の意味も書いてあるのを見つけたからですね。
(「銛(もり)」とは、魚を捕るための、槍っぽい道具のことですね。
昨日この「銛」について調べ、またその延長で漢和辞典を見てみた感じです)
つまり「銛」という字が書いてあっても、
それがそのまま「銛(もり)」を指しているとは限らず、
農具の「すき」の方を指しているかもしれない…と言うわけですね。
で、さらには今回本文で書いたように、
その「銛」の意味欄の「すき」も、そもそも①「鋤」か②「犂」か分からないので、
筆者としては悩ましい…という感じになったわけです。
しかし、「銛(もり)」と①「鋤(すき)」や②「犂(すき)」は、
形が違う(例えば「銛(もり)」は槍っぽいので地面を掘るのに向いてなさそう)上に、
使う場所がだいぶ違う(陸と海で割と真反対)かと思うのですが。
でも「銛(せん)」という同じ字が、それらの意味を表しているのは不思議ですね。
なのでもし昔の資料などに、
「銛」の字を、農具の「すき」の意味でも使っているっぽい物があったら。
「この『銛』(の字)は『すき(農具)』のことでは…?」と、注意して読まねばならないのかもですね。なんだこの謎の見分けゲーム
…魚豊かな海の近くの農村だと、さらに難易度が高そうですね。この「銛」は「銛(もり)」だけど、その「銛」は「すき(農具)」とか
そしてもし、あなたが昔の資料を読むことがあり、
その中で「なんかこの人、『銛』で地面掘ってる…?」的なシーンがあったら。
「農業に『銛(もり)』使うとか、昔は物資不足だっだんだろうなー」と決めつける前に、
「この『銛』、もしかして『すき(農具)』のことか!?」と、考えてみてもいいかもですね。
追記2
さて、本文などで少しだけ書かせて頂きましたが、
漢和辞典によれば、何故か農具「すき」の意味を持つ字は多いようです。
例えば漢和辞典によれば、「鋒(ほう)」という字は、
武器の「ほこ(矛、槍や剣っぽい武器)」や、
「ほこ」の先っぽ、先端(せんたん)である「ほこさき」という意味を持つようなのですが。
…しかしそれと同時に、上記の農具「すき」という意味も書いてありました。
もう「この『銛』も『鋒』も、実は全部『すき(農具)』なのか…?」という気分になってきますね。
そして詳細は省きますが、上記「鋤」、「銛」、「鋒」などの字を含めると、
手元の漢和辞典において、実に15種類以上の字が、農具「すき」の意味を持っているようでした。…多いですね。何故こんなに多いのでしょう。
…しかもこれは「金偏(かねへん)」系、漢和辞典で近くにあった字を調べただけなので、まだ他にある可能性もあります。
興味がある方は、少し探してみるのも面白いかもですね。
☆参考:農具「すき」等の意味を持つ漢字例
(※他にも、ネットの文字で上手く反映させられない字あり)
・鉏(しょ):「すき」
・銭(せん):「すき」の意味あり
・銚(ちょう):「すき」、「ほこ」の意味あり
・鍬(くわ):農具の「くわ(鍬)」などを指すが、「すき」の意味もあり
・鎒(どう):「すき」の意味あり
・鎛(はく):「すき」や「くわ」の意味あり
・鎡(じ):「すき」や「くわ」の意味あり
・鐝(けつ):「すき」の意味あり
・鐯(しゃく):「大きなすき」の意味あり
追記3
ちなみに「すき」という響きの語は他にもまだありますね。
例えば「好き(すき)」とか「隙(すき)」、「空き(すき)」、「梳き(すき)」、「漉き(すき)」などという感じです。
ラブコメマンガだと、「好き」と言ってしまったのを「隙…あり!」と言い換えたりして誤魔化す、というケースも時にある気がしますが、これは国語的に言うと「同音異義語(どうおんいぎご)」を活用した感じのテクニックなので、ある意味高度と言えるかもしれません。
◆用語集
・鋤(すき)【農具】:
主に手に持って使い、地面を掘り起こすための道具・農具。
ちなみに料理の「すき焼き(鋤焼、鋤焼き)」*7の由来に関わる道具だったりもする。
関連用語:「土(つち)」*8、「つるはし」*9、「ピッケル」
関連記事:『土を表す外国語セブン』*10
・犂(すき)【農具】:
牛や馬に引かせて地面を掘り起こす、耕す道具・農具。
・鍬(くわ)/クワ【農具】:
地面を掘り返すための道具・農具。
農業・園芸要素があるゲームなどでの登場率も高い印象。例えば『牧場物語』や『ルーンファクトリー』シリーズなど。
関連用語:「備中鍬(びっちゅうぐわ)」*11、「鍬形(くわがた)」*12、「クワガタムシ(鍬形虫)」
・農具(のうぐ):
関連用語:「農家(のうか)」*13
*1:「掘る(ほる)」については 12/19 英+学他:「受験生(じゅけんせい)」は毎日「dig(ディグ)」してますか? ~「dig/こつこつ勉強する(等)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*2:「シャベル/ショベル」については 5/19 英語:「アイス」と「ニュース」を「スクープ」する!? ~「scoop(スクープ)」についての話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*3:「農業(のうぎょう)」については 4/3 中+諸:「農(のう)」に関わる中国語7つ! ~今週の外国語セブン~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*4:「牛(うし)」については 6/24 英語:ゲーム/「英語サバイバル」食事編 ~ゲーム実況的な感じで~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*5:「馬(うま)」については 12/27 社会/騎士(きし)と馬(うま)の話(ざっくり) - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*6:漢字の「銛(せん)」や「銛(もり)」、また「漁具(ぎょぐ)」については 3/19 社+英他:あなたは「銛(もり)」を知っていますか? ~「銛/harpoon(ハープーン)」と、対艦ミサイル「ハープーン(Harpoon)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*7:「すき焼き」については 8/29 生+社:世界の「焼肉(やきにく)」、古代(こだい)の「焼肉」!? ~色んな「焼肉」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*8:「土(つち)」については 5/22 理科:四大元素(しだいげんそ)の話 ~地水火風~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*9:「つるはし」や「ピッケル」については 6/4 国+英:「鶴(ツル)」はツルでも、鋼(はがね)の「ツル」!? ~「つるはし」と鶴(ツル)の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*10:記事『土を表す外国語セブン』については 11/13 理+諸外:「土(つち)」を表す外国語7つ+α! ~今週の外国語セブン~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*11:「備中鍬(びっちゅうぐわ)」については 1/16 社会(歴地):これは「(地名)産の○○(商品名)」ですか? ~江戸時代の有名アイテムたち~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*12:兜の左右に立てる金属の部分「鍬形(くわがた)」や、「クワガタムシ(鍬形虫)」については 8/22 理+英:「クワガタムシ」といえば「鹿(しか)」ですか? ~「鍬形(くわがた)」と「stag beetle(スタッグ・ビートル)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*13:「農家(のうか)」については 7/11 英語:接尾辞/色んな「-er」 - のっぽさんの勉強メモ を参照。