理科+英語+社会の話ー。
「武士は家に上がる時に備え、スリッパを常備した…」という話ではありません。
膨らんだ花びらを持つ植物「アツモリソウ(敦盛草)」と、
その由来に絡む、膨らんだ形の武具「母衣(ほろ)」、
そしてアツモリソウの英名「lady(s)-slipper(レディズ・スリッパー)」等の話を。
(※本記事中、人名等敬称略)
前置き。
筆者がちょっと調べ物をしていると、
「lady(s)-slipper(レディズ・スリッパー)」や「アツモリソウ」などの
面白そうな語を見つけたので、その話を。
※
まず、「アツモリソウ」という植物の話から。
Wikipediaで調べてみると「アツモリソウ」は、ラン科アツモリソウ属の多年草らしいです。
「袋状の唇弁(しんべん)を持つ花の姿を、平敦盛(たいらのあつもり)の背負った母衣(ほろ)に見立ててつけられている」と書いてありました。
つまりざっくり言うと、ふくらんだ花びらが「母衣(ほろ)」というものに似ているということですね。
(ちなみに「平敦盛(たいらのあつもり)」というの平安時代末期の武将ですね)
で、同じくWikipediaによれば、
「母衣(ほろ)」とは、武士がつけていた武具の一種らしいです。
マントのように鎧(よろい)の後ろの方に付けるのですが、
中身などを入れて膨らませる、というのが特徴のようですね。
外見的には「荷物を布でくるんで背負っている」みたいな感じになります。
後ろから(攻撃のために)飛んでくる、石や矢を防ぐ目的だったようですね。
ところで「アツモリソウ」には英名もあるようでして。
手元の英和辞典によれば、「lady(s)-slipper(レディズ・スリッパー)」、
Wikipediaの「アツモリソウ亜科」のページでは「Ladys slippers (レディズ・スリッパーズ)」となっておりました。
これは「貴婦人(きふじん)のスリッパ」という意味らしいです。
また詳細は略しますが、アツモリソウの学名にも「サンダル」という言葉が関係しているので、
英語圏・欧米におけるアツモリソウは「(丸い)靴っぽい」と見られていたのかもしれません。
なので、アツモリソウの「膨らんだ部分」が、
日本では「母衣」、英語圏では「スリッパ」とみなされた、ということですね。
そのため英語圏の方々が、武士の「母衣」の膨らんでいる様子を見たら、
「『武士』は『スリッパ』(みたいな物)を背負っていた…!?」なんて思うかもですね。
…逆に武士の方々がスリッパをみたら「母衣に似ている靴…!?」と思うのかもですが。
※
まあ上のことは割とジョークですが、
同じ花でも、文化によって名前が違うのは興味深いですね。
アツモリソウの場合、日本では「武士」、英語圏では「貴婦人」と、
かなりイメージが違う言葉に関係しているのが面白いです。
あなたの知っている日本名の花も、英名や学名だと面白い名前になっているかも?
(そしてまたその逆もありそうです)
ちょっと調べてみるのもいいかもですね。
まあそんな感じで~。
追記
しかしアツモリソウのように、「その文化にしかない物・人物に関係する名前」だと、
なかなか海外の人に説明するのは難しいかもですね。
まず「平敦盛」や「母衣」について説明しなければなりませんし。
◆用語集
・アツモリソウ:
・スリッパ:
関連用語:「上履き(うわばき)」*1
関連記事:『靴を表す外国語セブン』*2
・母衣(ほろ):
似てる語:「母屋(おもや)」*3
*1:「上履き(うわばき)」については 9/26 生+英:その「上履き(うわばき)」は(他の県で)使えますか? ~「上履き」、「下履き」などの話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*2:記事『靴を表す外国語セブン』については 7/2 生+諸外:「靴(くつ)」を表す外国語7つ+α! ~今週の外国語セブン~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*3:「母屋(おもや)」については 国+社:家に本屋はありますか? ~①書店の「本屋(ほんや)/書店」と、②建物の「本屋(ほんや、ほんおく)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。