国語+生活+社会の話―。
「1回拒否された後でないと、許可が出ないシステムで…」的な話ではありません。
何かを拒否(きょひ)する意味の語、①「断る(ことわる)」と。
許可(きょか)*1をもらうため等に、何かを事前(じぜん)に知らせる意味の語、
②「断る(ことわる)」の話を。
※「断る(ことわる)」は「断わる」表記もありますが、
本記事では文を短くする意図(いと)もあり、「断る」表記を中心にしています。
前置き。
まず普段①「断る(ことわる)/断わる」というと、何かを拒否(きょひ)する語の印象もありますね。
例えば「相手(あいて)の提案(ていあん)を断る」とか、
「すみませんがそのお話、お断りさせて頂きます」といったりする感じです。
で、普段「断る」というと、上記の「拒否」の意味が多い気もするので、
シンプルに「断る=拒否する」と言ってしまいたくなるかもですが。
…しかし、実はそう簡単(かんたん)にいかなかったりもします。
というのも、他にも「断る(ことわる)」という語があるからですね、
国語辞典によれば、「断る(ことわる)」には、
②「事前(じぜん)に知らせておく」という意味のものもあるようです。
この場合、例えば「○○さんに一言『断わって」おく」と書くと、
「○○さんに『事前に知らせて(断わって)』おく」的な意味になる訳ですね。
ちなみに手元の和英辞典では、この②「断る」に関して、
「自転車は誰が乗っても良いですが、『断わってから』お使い下さい」」
という例文が載っていたのですが。
…でも①「断る/拒否」の方だけ知っている人がこの文を読むと、
「『許可』(をもらう)には『拒否(①断ること)』が必要なの…!?」
なんて思いそうで、ちょっと面白いですね。
何かを手に入れるには、何かを失わなければならない的な
※
まあ②「断る/事前に知らせる」という語自体は、
昔に比べると使わなくなっている感もありますが。
でも例えば、今でもよく聞く印象の「無断(むだん)」という語は、
「断り無く」…つまり「事前に知らせずに」といった意味なので、
②「断る」の方に関わる語だったりします。
そう考えると、今でも出番(でばん)は多い語かもですね。
さて、例えばあなたが誰かと、何かをやろうとした時。
相手に色々②「断る(事前に知らせる)」ことを忘れて、
①「断られる(拒否される)」…というのも残念なので。
2つの「断る」は、どちらも意識しておくと良いかも?
まあそんな感じで~。
追記
ちなみに「断る」を名詞形(めいしけい)にすると「断り(ことわり)」になりますが。
これを参考にすると、
例えば「許可無く私の物を使うのはダメだぞ!」という意味で、
「『断り(事前の知らせ)』が無いのは『お断り(拒否)』だからな!」と言うこともできそうですね。
…普通にあり得る文かと思うのですが、何故かジョークっぽくなってしまいますね。
追記2
ちなみに本文では2つの「断る」を紹介しましたが、
これらの区別が、少し難しいこともあるように思います。
例えばマンガとかでは時々、
「『断っておくが』、私はついて行かないからな!」といったセリフがある気もしますが。
これの最初の『断っておく』は①「断る/拒否する」意味…ではなく、
「ついていかないことを『事前に知らせている』」から、「②断る/事前に知らせる」方かと思われます。
でもセリフ全体が否定的なテンションなので、つい①の方にも見えてややこしいですね。
この辺りは難しいですが、例えば似たようなセリフで、
「『断っておくが』、私はお前についていくからな!」とか、
「『断っておくが』、私はお前に賛成(さんせい)だ!」といった、
相手に対して肯定(こうてい)的なものを考えてみると。
「ああ、ここでの『断わっておくが』は、単に②『事前に知らせる』意味か…」という感じで、分かりやすいかと思います。
(似た語の「言っておくが」を参考にして分かりやすいかもですね)
追記3
ちなみに本文ではジョークで書いた「許可の前に拒否」といったネタですが。
割とこれに近い話では、三国志(さんごくし)では「三顧の礼(さんこのれい)」という故事成語(こじせいご)もあったりします。
ざっくり言うと「礼儀(れいぎ)を尽くして、(2回失敗しても)同じ人の所に三回(さんかい)訪れた」…という出来事が元になっている語ですね。
追記4
ちなみに「ことわり」という響きでは「理(ことわり)」という語もありますが、また別の語ですね。
こちらは「物事(ものごと)の筋道(すじみち)」みたいな意味の言葉です。
ちなみにゲーム『真・女神転生III』という作品には、思想(しそう)などに関わる「コトワリ」という用語も出てきたりします。