歴史の話ー。
「願掛け(がんかけ)」のために、3年間下着*1を替えなかったという、
カスティーリャ王国女王*2「イサベル1世」の話です。
(本文集、人名敬称略)
前置き。
先日19・20日には大学入試センター試験がありましたね。
こういった受験のシーズンには、時にいろんな「願掛け(がんかけ)」がなされたりします。
例えば「願いが叶うまで好きなものを食べない」とか、神社に「お百度参り」したりとか、色々ですが。
ですが歴史上には「勝つまで下着を替えない」という、すごい願掛けをした人もいたりします。
それがカスティーリャ王国の「イサベル1世」( 1451 - 1504)という女性ですね。
まず「カスティーリャ王国」というのは今の「スペイン」*3のあたり、「イベリア半島」あたりにあった国です。
「イサベル1世」はそこの女王様ですね。
当時のこの辺りではキリスト教とイスラム教が争い、領土の取り合いをしておりました。
このイベリア半島は8世紀初頭にはイスラム教の側が征服したのですが、
その後、キリスト教側が征服し返す、という動きが続きまして。
この再征服活動を(キリスト教の側からすると)「レコンキスタ(熱狂的再征服活動)」と言ったりします。
で、1492年に、イスラム国家「グラナダ王国」を制圧したことで、キリスト教がイベリア半島を再征服。
この「レコンキスタ」は完成するのですが。
Wikipediaによれば、このグラナダ陥落までの3年間、イサベル1世は「願懸け」として下着を替えなかった、と言われているようです。
…なかなか気合の入った話ですね。3年ではなく「9か月」という話もありますが、それでもすごいです。
ちなみにこのことから「イザベル色(茶色がかった灰色*4)」という色*5の名前も生まれたようです。深く考えるとちょっとシュール。
ただこの願い通じてか、上記のようにグラナダ王国は陥落し、800年間続いた「レコンキスタ」が終わります。
キリスト教側にとってみれば、さぞ嬉しかったことでしょう。
さて、「イサベル1世」の願掛けは確かに気合が入ったものでしたが、
同時に彼女は戦場を奔走する夫「フェルナンド2世」のために、軍資金・物資調達なども頑張ったようです。
要は「願掛け」だけしてたわけじゃないってことですね。
「人事を尽くして天命を待つ」(やることやってから運命を待つ)という言葉もございます。
受験とかでも「これだけ願掛けをしたから大丈夫」とサボってしまうのではなく、
結局「まず自分にできることをする」というのがいつでも大事なのかもしれません。
まあそんな感じで~。
◆用語集
・イサベル1世:
カスティーリャ王国女王。
父はフアン2世、夫はフェルナンド2世。
国の名前がちょっとややこしいのだが、「カスティーリャ=レオン王国」に生まれてきた。何故国名に「=」が入っているかというと、1人の王が2つの王国を支配したりしているのでこんな感じになったりする。
が、父「フアン2世」が死んだ後に王位継承権問題が起こり、だいぶゴタゴタしたらしい。
で、Wikipediaによれば、しばらくしてイサベルがポルトガルに嫁がされようとしていた時、「同盟相手として必要なのはポルトガルではなく、アラゴン=カタルーニャ王国(地中海に領海権を持っている)の王子フェルナンドである」と結論を下したらしい。そして彼女はフェルナンドとこっそり会って結婚し、後に2人で王様になった。すごい行動力と政治的センスの持ち主である。
あの「コロンブス」*6に援助をしたことでも有名。
またWikipediaによれば熱心なカトリック教徒であり、反面、他の教徒には厳しかったとか。他教徒を弾圧したり、「異端審問(いたんしんもん)」*7を行ったりしたらしい。
ちなみに娘に「フアナ」という女性がおり、ハプスブルク家に嫁いでいったが、精神的に錯乱を起こしてしまったという。
・イザベラ色(イザベル色):
茶色がかった灰色などを指す色。
由来は上記のイサベル1世のエピソードから。
インターネットで検索してみたら「イザベラ色のポメラニアン」とか「イザベラ色のチワワ」という言葉が出てきたので、犬*8の毛色としてよく使う言葉のようだ。
関連記事:『色を表す外国語セブン』*9、
・フアナ:1479 - 1555。
上記の「イサベル1世」の娘。
Wikipediaによれば当時の名門「ハプスブルク家」へ嫁いでいったが、精神的に錯乱を起こしてしまったという。
「狂女フアナ」(Juana la Loca)という異名でも知られ、劇術作品の題材ともなったと。
どうも夫の浮気で精神的に不安定になり、夫の死後、さらにそれは激しくなったということらしい。
そして彼女は約40年の長期間にわたり幽閉されることになる。
だが長男「カルロス1世」とともに名目上の「共同統治者」ではあり続け、公文書には彼女のサインも添えられていたのだとか。
そんな状況だが、皮肉にもカルロス1世の統治下で「スペイン帝国」は隆盛したらしい。
・ハプスブルク家:
今でいうスイスのあたりの、ドイツ系の貴族。
ざっくり言うと一時期めっちゃ力を持っていた。
テレビ情報だが、今でもヨーロッパ系の美術館*10に収められている豪華な宝石とかはよく「ハプスブルク家ゆかりの~」というものがあったりするようだ。
・イベリア半島:
ちなみに音楽グループ「Sound Horizon」の曲シリーズに『聖戦のイベリア』というものがあるが、これは記事中にも出た「レコンキスタ」の様子がテーマになっていたりする。
関連用語:「タンゴ」*11
・ポメラニアン:
犬の一種。
*1:「下着(したぎ)」については 7/1 体+英:「インナーマッスル」の話メモ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*2:「女王(じょおう)」については 10/15 英語:レース場にいる「女王(じょおう)」! ~「レースクイーン」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*3:ヨーロッパにある国「スペイン」については 6/30 英+スぺ:英語とスペイン語ちょいメモ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*4:「灰色(はいいろ)」については 12/6 英語:色々あるよ「白い髪(かみ)」 ~白、灰、銀、白金~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*5:「色(いろ)」については 5/3 英+国他:色(いろ)/赤(あか)の表現 - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*6:「コロンブス」については 6/17 英+理+家:野菜(やさい)に関する英単語 - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*7:「異端審問(いたんしんもん)」については 10/13 英+こころ他:「異性愛(いせいあい)」は「異端(いたん)」ですか? ~「heterosexual(ヘテロセクシャル)」と「heterodox(ヘテロドックス)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*8:「犬(いぬ)」については 12/29 国+理:「犬(いぬ)」も「侍(さむらい)」になりますか? ~「犬侍(いぬざむらい)」と「文化(ぶんか)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*9:記事『色を表す外国語セブン』については 12/9 美+諸外他:「色(いろ)」を表す外国語7つ+α! ~今週の外国語セブン~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*10:「美術館(びじゅつかん)」については 8/17 英語:「博物館(はくぶつかん)」に関する英語7つ+α! ~今週の英語セブン~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*11:舞踏曲の「タンゴ」については 12/16 音+国:「タンゴ」と「端午(たんご)」と「単語(たんご)」の話! ~色んな「たんご」~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。