国語+こころ+理科の話ー。
「頭で考えるな!肝臓で感じろ!」的な話ではありません。
「心(こころ)」の意味もある語「肝心(かんしん、かんじん)」と、
内臓の一種「肝臓(かんぞう)」、また漢字の「肝(かん)」などの話を。
前置き。
昨日は「担(たん)」の字などについて書きましたが。
そこから似た語の「胆(たん)」、また「肝(かん)」などを調べていたら。
「肝心(かんじん)」という語が面白かったので、その話を。
※
まず「心(こころ)」とは、何かを感じたり考えたりする動き、
またはそのための器官(きかん)のことですね。
例えば心があるから、人は感情(かんじょう)を持てたりするイメージです。
で、「心」自体は「物体ではないし、目に見えない」とされたりしますが、
現代では、「脳(のう)」が一番、心に関わっていると考えられている気がします。
「脳=心」と思うかは人によりますが、脳は、思考のために重要な器官ですしね。
ですが一方で、昔の言葉・言い回しにおいては、
脳以外の内臓(ないぞう)…例えば「肝臓(かんぞう)」などが、「心」と関わったりもするようです。
というのも、「肝心(かんしん、かんじん)」という語が、心を表したりもするからですね。
漢和辞典によれば「肝心」は、2つの読みがあるようで。
①「肝心(かんしん)」…「肝臓(かんぞう)と心臓(しんぞう)」、「心」、
②「肝心(かんじん)」…「最もたいせつ(大切)な所」、「心」
…という感じのようですね。
①と②のどちらにも、「心」という意味が含まれているのが興味深いです。
「心臓(しんぞう)」は、現代でもよく「心」に関わるとされますが、
「肝臓(かんぞう)」は、お酒の飲み過ぎでうんぬん…という印象の器官なので、
個人的には、「肝心」の形で「心」に関わっているのが、少し意外ですね。
ただ漢和辞典によれば、そもそも「肝(かん)」という字が、
「まごころ」とか、「たいせつ(大切)な所」という意味を持っているようです。
そう考えると特に昔は、
「『心(肝心)』は『肝臓』にある!」と考えたりしたのかもですね。
※
まあだからといって、「肝臓さえあれば、脳は無くてもいい」とはならないですし、
現代で「心は肝臓にある」という考えは、多数派ではなさそうですが。
でも現代でも、「腹の中」というと「考え」を表したりしますし、
ストレスが溜まると、「お腹」や「臓器」に影響が出たりもします。
そういう意味では、心と臓器・お腹・肝臓は関係がありそうですね。
(※心が直接ある場所じゃなくても、心と影響しあう関係はある感じで)
「心(肝心)」が「肝臓」にあるかはともかくとして、
体の具合がどこか悪いと、「心」も嫌な気分になりがちなもの。
「まあ『内臓』は粗末(そまつ)にしてもいいだろ…」と思うよりは、
肝臓・内臓を含む「お腹」周りにも、「心くばり」(配慮)しておくといいかも?
まあそんな感じで~。
追記
ちなみに「肝」の関わる語「肝胆(かんたん)」は、
「肝臓(かんぞう)と胆嚢(たんのう)」(どちらも内臓)という意味があり、
また他にも「まごころ」や「心の中」という意味があるようです。
こちらでも「心」と関わっているわけですね。
また上記の漢字「胆(たん)」は、
「豪胆(ごうたん)」や「胆力(たんりょく)」など、
精神力や、根性(こんじょう)がある様子を表すのに使われたりもします。
英語系でも「ガッツ(guts)」は根性を表す語(※俗語らしいですが)だったりしますが、
これも、元々「内臓」の意味を持つらしいですね。
なので日本語・英語ともに、心…というか「精神力」と「内臓」が関わっていそうですが。
これは何かに耐える時の、「『お腹・内臓(胆・ガッツ)』に力を入れてふんばる」という様子が、
「あいつ『根性(胆力・ガッツ)』あるぜ!」と見なされたのかもですね。
追記2
上では略しましたが、昔から「脳裏(のうり)」という言葉はあったりします。
なので「昔は、脳は全く心と見なされていなかった…」という訳ではないのでご注意を。
ただエジプトでミイラを作るときには、死者の復活に備えて臓器を保管していたようなのですが、
その時「脳は鼻水を作るための器官とされ、捨てられていた」という話を聞いたこともあります。
(現代やSFでは、むしろ脳が最優先とされそうなので、ギャップが興味深いです)
なので時代や国・宗教によって、心や魂、器官や臓器に対する考え方はだいぶ違うかもですね。
◆用語集(※編集上の都合のため、一部過去記事より移転)
・肝臓(かんぞう):
「肝(きも)」と呼ばれることもある。
・肝(きも):
動物の臓器のことなど、内臓や肝臓など。
または「精神力」等を意味することもある。
関連語に「肝試し(きもだめし)」、「肝っ玉(きもったま)」等もある。
関連用語:「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」*1、「羊羹(ようかん)」*2
・肝(かん):
・肝心(かんしん):
・肝心(かんじん):
*1:「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」については 1/7 歴史:薪(たきぎ)に寝て、肝(きも)を舐める話!? ~「臥薪嘗胆(がしんしょうたん」と「復讐(ふくしゅう)」の連鎖~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*2:羊の肝に由来が関わるらしい「羊羹(ようかん)」については 6/5 生+歴他:「羊羹(ようかん)」といえば「スープ」ですか? ~「羊羹」と「羊の羹(あつもの)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。