国語+こころの話―。
「ときめいた」ではなく「とちめいた」なのがポイントです。
何かを失敗すること等を表す「とちる(トチる)」と、
その由来に関係あるっぽい動詞「とちめく/うろたえる」、
またそれらの関連語「とちめん坊(とちめんぼう)」の話を。
遅くなってしまったので簡単に。
前置き。
まず「とちる(トチる)」というと、何かを失敗(しっぱい)することですね。
国語辞典によれば、元々は俳優(はいゆう)がセリフや仕草(しぐさ)を間違えることだったらしいのですが、
後に広がって、物事をやり損なうこと…つまり失敗すること全体も指すようになったようです。
で、筆者は「とちる」について、今まで気にしてこなかったのですが。
調べてみると、どうも意外な響きの語が由来にあるようです。
というのも、「とちめく」という語があるらしいからですね。
残念ながら、手元の国語辞典に「とちめく」自体の欄(らん)は無かったのですが、
でも「とちる」の欄に、「『とち』は『とちめく』の語幹(ごかん)」と書いてありました。
つまりざっくり言うと、「とちる」の「とち」は、「とちめく」(の語幹/パーツ)から来ている…みたいな感じですね。
また「とちる」の関連語「とちめん坊(とちめんぼう)」という語は、
「うろたえる意味の動詞『とちめく』を擬人名化(ぎじんめいか)したもの」と説明されていました。
(「擬人名化」というと難しそうですが、いわゆる「慌てん坊(あわてんぼう)」みたいな名付け方ですね)
そのため上記の情報を合わせると、
「うろたえる(狼狽える)」…慌てる意味の「とちめく」という語があり、
その「とち」の部分が、「とちる」にも使われている、的な感じっぽいです。
さて、この「とちめく」という語は、
多分似た語の「ときめく」*1と似た変化をすると思われます。
そのため、「ときめく」の過去形が「ときめいた」になるように、
「とちめく」の過去形は「とちめいた」になると思われるのですが。
しかし「あなたは『とちめいた(うろたえた)』ことはありますか?」と聞いても、
多くの人は意味がわからなさそうなので、
「いや、多分無いと思いますけど…」と答えそうですね。
でも「あなたは『うろたえた(とちめいた)』ことはありますか?」とか
「あなたは『とちった(失敗した)』ことはありますか?」と聞いたら、
多くの人は「もちろんありますよ!」と答えそうなのが、ギャップで面白いです。
※
まあ「とちめく」も「とちめん坊」も普段はあまり聞かず、
「とちる」も、お堅(かた)い場ではあまり聞かなさそうな言葉ですが。
でもこれらは「失敗した」とか「パニックになった」などに比べて、
ちょっと雰囲気(ふんいき)が柔(やわ)らかい語の気もしますね。
なので、何かにうろたえて失敗してしまって、
でも「真面目に考えすぎると、自分を責めてイヤだな…」なんて思った時は。
心の中でこっそり、
「『とちめいて(うろたえて)』『とちっちゃった(失敗しちゃった)』な~」、
「私ったら『とちめん坊』!」なんて思ってみるのも、いいかも?
言葉が面白げなので、少し気分がマシになったりするかもですね。
まあそんな感じで~。