歴史の話ー。まだ調子悪いので簡単に。
中世ヨーロッパのの「女性領主*1」の話です。
中世ヨーロッパの領主、というと男性が多いイメージですが、
女性の領主がいなかったわけではありません。
手元の『ファンタジー世界読本』(幻想世界史研究会編,2013)には中世の時代においての女性の活躍が載ってます。
その中には「トスカナ女伯(とすかな・じょはく)」という人物も載っています。
(トスカナは地方の名前で、「女伯(じょはく)」は「女性の伯爵(はくしゃく)」という意味です。
「伯爵(はくしゃく)」というのは貴族の位の一つです)
彼女は世界史の教科書*2に載ってる「カノッサの屈辱」に関して活躍した人物です。
ざっと事件を説明すると、
神聖ローマ皇帝「ハインリヒ4世」が教皇「グレゴリウス7世」と争って
キリスト教*3から破門(はもん)される、という事件が起きました。
「破門(はもん)」というのは追い出すことで、つまり「お前をキリスト教とは認めないからね!」みたいな感じです。
当時ヨーロッパはキリスト教抜きでは考えられない世界だったので
キリスト教からの破門、となるとかなり重大な事態になります。
(この時代、生まれた子はすぐに洗礼(せんれい)*4を受け、キリスト教徒でないと天国に行けないとされていました。
つまり、破門は世界*5から見放されることであり、死後は地獄に落ちかねない、ということを意味します。)
そこでハインリヒ4世が「カノッサ城」*6にいたグレゴリウス7世に対し、
カノッサ城の外の雪*7の中で許しを乞うた……というのが、「カノッサの屈辱」という事件です。
で、『ファンタジー世界読本』によれば、
この時のカノッサ城の持ち主は「トスカナ伯の未亡人マティルダ」であった(上記 p.32)と書かれています。
(「未亡人(みぼうじん)」というのは夫を亡くした女性に対する言い方)
さらに、手元の『ビジュアルワイド 図説世界史』(東京書籍研究部,1997)においては「カノッサの屈辱」を描いた絵の解説に
「教皇グレゴリウス7世に破門されたハインリヒ4世が、クリュニー修道院長とトスカナ女伯に仲裁を頼む場面」(上記,p.102)と書かれていますので、
「トスカナ女伯」はただ城を持っているだけでなく、この事件について活躍を果たした、ということになります。
細かいデータは今手元にはありませんが、日本の戦国時代でも女性の武将、城主は意外といたといいますし。
けっこう探して知ってみると、中世ヨーロッパや日本の戦国時代のイメージが変わるかもしれません。
まあそんな感じで~。
◆参考文献
・幻想世界史研究会編,2013,『ゲーム・映画・マンガがもっと楽しくなる ファンタジー世界読本』,実業之日本社
・東京書籍研究部,1997,『ビジュアルワイド 図説世界史』,東京書籍株式会社
◆用語集 (人物名は敬称略)
・トスカナ女伯:
トスカナ州の女性伯爵。
ここでは、「カノッサの屈辱」に関わったある個人を指す。
wikipediaによれば名前は「マティルデ・ディ・カノッサ(Matilde di Canossa)」(1046年? - 1115年」)。
本文で「未亡人」と書いたが夫からトスカナ伯を継いだわけではない。
もともと父がトスカナ伯であり、兄がそれを継ぎ、その兄が亡くなった後にトスカナ伯となったようだ。
だから夫と結婚する前からトスカナ女伯ではあったことになる。
・トスカナ州(Toscana)/トスカーナ州:
現在のイタリア*8の州の一つ。
芸術*9の都「フィレンツェ(Firenze)」や「ピサの斜塔」で有名な「ピサ(Pisa)」などの街などがあることでも有名。
wikipediaによれば、 ルネサンス期に活躍した「レオナルド・ダ・ヴィンチ」、「ミケランジェロ」「ラファエロ」などはトスカーナ人らしい。
あと「ダンテ」や「アメリゴ・ヴェスプッチ」「ガレリオ・ガリレイ」も。
すごいぜトスカーナ州。
・伯爵(はくしゃく):
貴族*10の位である「爵位(しゃくい)」の一つ。
偉さはだいたい①大公(たいこう)・②侯爵(こうしゃく)・③伯爵(はくしゃく)・④子爵(ししゃく)・⑤男爵(だんしゃく)、という順番。
当時の貴族はつまり「領土*11を持っている」ということである。
ちなみに「騎士」は位を持たない貴族という扱いだったようだ。
上記のトスカナ女伯がついだのは「トスカーナ辺境伯」であり、普通の「伯」(伯爵)よりちょっと偉かったようだ(wikipedia「辺境伯」参考)。
関連用語:「サンドウィッチ伯爵」*12、「カーディガン伯爵」、「ローズ伯爵」*13
・カノッサ(Canossa):
現在でいうイタリアにある町。
今ではエミリア=ロマーニャ州レッジョ・エミリア県という扱い。
トスカーナ州ではないようだが、当時はここもトスカーナ辺境伯が所有していたのだろうか?
詳しく調べる必要がありそう。
・ハインリヒ4世(Heinrich IV):1050-1106。
神聖ローマ皇帝。
教皇グレゴリウス7世と激しく争った。
・グレゴリウス7世(Gregorius VII):1020?-1085。
ローマ教皇。
ざっくり言うと「教皇(きょうこう)」というのはキリスト教のカトリック教会で一番偉い人。
グレゴリウス7世は特にハインリヒ4世との争いで知られる(「叙任権闘争/じょにんけんとうそう」という)。
当時、キリスト教の聖職者を任命する権利は皇帝などが持っていたので、
それをめぐって教皇と皇帝が争った、という話。
・神聖ローマ帝国:
昔あった国。ここら辺の国は激しく名称を変えているので分かりにくい。
日本では962年に始まったとしているが、ドイツではまた違う見方をしているらしい。
関連用語:「ローマ」*14
・教皇(きょうこう):
英語では「Pope(ポープ)」。
タロットカード*15の絵柄の一つでもある。その場合の呼び名は「The Hierophant(ハイエロファント)」。
『ジョジョの奇妙な冒険』第3部を知っている方にはおなじみかもしれない。
関連用語:「聖ペテロ」*16
・破門(はもん):
*1:「領主(りょうしゅ)」については2/14 歴史:「ゴディバ」と「ゴダイヴァ夫人」の話 ~裸で馬に乗った話!?~ - のっぽさんの勉強メモ参照。
*2:「教科書(きょうかしょ)」については 12/1 英語:英語の「比較級(ひかくきゅう)」・「最上級(さいじょうきゅう)」って便利だね、という話 - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*3:「キリスト教」については12/17 社会:水(みず)と宗教(しゅうきょう)の話(ざっくり仮説) - のっぽさんの勉強メモ参照。
*4:「洗礼(せんれい)」については 3/28 国+社他:「フォント」といったら「洗礼盤(せんれいばん)」ですか? ~色んな「font(フォント)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*5:「世界(せかい)」については 2/11 学習:世界(せかい) is テキストブック!? - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*6:「城(しろ)」については 10/15 歴史:お城と大砲(たいほう)と五稜郭(ごりょうかく)! ~城の形が変わった訳~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*7:「雪(ゆき)」については 1/16 英語:「氷(こおり)」関係の英単語~氷魔法アイスクリーム~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*8:「イタリア」については 4/10 社+音:ボロネーゼとポロネーズ! ~パスタとダンスと英雄(えいゆう)~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*9:「芸術(げいじゅつ)」については 11/3 英語:色んな「art(アート)」/芸術(げいじゅつ)、ゲーム、人工知能(じんこうちのう)!? - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*10:「貴族(きぞく)」については 12/5 英語:ミュージック(music)の由来とギリシャ神話 - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*11:「領土(りょうど)」については 4/24 英語:お遊び/中二病的な英文例 ~あいつは魔王で魔眼使い~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*12:「サンドウィッチ伯爵」や「カーディガン伯爵」については 10/5 歴+家:面倒くさがって大発明!? ~「サンドイッチ」と「伯爵(はくしゃく)」の話~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*13:ヴァンパイアカフェの「ローズ伯爵」については 9/24 社+ゲーム:「吸血鬼(きゅうけつき)」の経営するカフェ!? ~「ヴァンパイアカフェ」の紹介~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*14:「ローマ」については 11/30 英語:ローマ字 - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*15:「タロット」については 1/22 理科:すごいよ!太陽(たいよう)さん ~理科の教科書を貫く用語~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。
*16:「聖ペテロ」については 8/20 歴+英:「岩(いわ)」と「石油(せきゆ)」と「聖ペテロ」!? ~「petro」について~ - のっぽさんの勉強メモ を参照。