国語+社会+生活の話ー。
「実は医療現場では、スプーンが一番使われていて…」的な話ではありません。
今で言う「スプーン」的な道具「匙(さじ)」と、
その「匙」と「医者(いしゃ)」が関わる言葉、
「匙を投げる(さじをなげる)」や「御匙(おさじ)」などの話を。
前置き。
昨日「瑣事(さじ)」について書いたので、
今日は似た語の「匙(さじ)」の話を。
※
まず「匙(さじ)」とは、ざっくり言うと「スプーン」的な道具ですね。
手などで持って、何かを掬(すく)ったりする道具です。
(少し違うのかもですが、Wikipediaでは「スプーン」が「匙とも言う」と解説されてました)
スプーンとしては、食器(しょっき)として使ったり、また材料などを計る「計量(けいりょう)スプーン」などもありますね。
で、「匙」こと「スプーン」は、
今では上に書いたような「食器」などのイメージが強い気もしますが。
しかし昔はまた少し違ったかもしれません。
というのも、「医者(いしゃ)」と「匙(さじ)」が関わる言葉が結構あるからですね。
例えば「匙を投げる(さじをなげる)」という言葉がありまして。
これは「何かを諦(あきら)める」意味でもよく使われますが、
国語辞典では、「医者が、治療(ちりょう)の見込みが無いため、薬(くすり)の調合(ちょうごう)や投薬(とうやく)をやめる」という意味が先に載っていました。
また国語辞典には「御匙(おさじ)」という語も載っており、
これは「江戸時代、貴人の侍医の称」とあったので、
ざっくり言うと「(江戸時代における)偉い人のかかりつけ医・専属医師(の呼び名)」みたいな感じですね。
では、何故「匙」の名前が医者関係でよく出てくるのか?
ということについて、ちょっと考えてみたのですが。
これは「昔の医者が出す薬は、匙(スプーン)で計って出す物も多かった」からではないかと思います。
(※この辺り、また以下は筆者の仮説も多いので、ご注意を)
例えば、日本史では、
江戸時代に『解体新書(かいたいしんしょ)』などの西洋医学が伝わってきたことや、
そこに人体の詳しい解剖図(かいぼうず)などが描かれている様子が、教科書や資料集に載っていたりします。
なので逆に言えば、
それまでの日本の医学は、メスなどで切ったりする「手術(しゅじゅつ)」はあまりせず、
薬…今で言う「漢方(かんぽう)」的な飲み薬などがメインだったのかな、なんて思います。
(既にやっていることだったら、『解体新書』はあまり驚かれてなかったと思うので)
で、そう考えると、昔は今みたいに「大量生産された薬」はないので、
医者が「一回一回、量を量って調合する薬」が多く…、
それこそ医者が「匙(さじ)/スプ-ン」を使うことが多かったのかな、と。
だからこそ、上に書いたように医者が「御匙(おさじ)」と呼ばれたり、
「匙を投げる」という語があるのでは無いかと思います。
(ちなみにWikipediaには薬を調合するための「薬さじ(やくさじ、薬匙)」という道具も載っていました)
なので、現代では「医者」といったら、
「白衣」とか「メス」がイメージされそうなのに対して。
江戸時代などの昔の日本では、
「『医者』といったら『スプーン(匙)』!」って感じがあったかもですね。
※
まあ上のことは割と筆者の仮説も入ってますし、
今のお医者さんは、スプーンや匙以外の道具がメインかもですが。
でもあなたが今度「スプーン(匙)」を使う時…、
特に「計量スプーン」を使いつつ、料理などを作る時は。
昔のお医者さんをイメージしつつ「匙(スプーン)」を使ったり、
「ちょっとミスった!でもまだ『匙を投げない(諦めない)』ぞ!」
なんて思ってみても、楽しいかもですね。
まあそんな感じで~。