国語+こころの話ー。
現代でもよく聞く印象の語、「妥協(だきょう)」の、
「おだやかに話をつける」などのプラスっぽい意味と、
「権力に屈する」とか「自分の主張をごまかす」等の、マイナスっぽい意味の話を。
遅くなってしまったので簡単に。
前置き。
まず「妥協(だきょう)」とは、何かをある程度ガマン(我慢)する…みたいなイメージの語ですね。
例えば「この辺りで妥協しましょう」というと、
「100%満足じゃないけど、まあまあの条件なので決めましょう」という感じです。
(※ちなみに言葉の意味としては「妥協」は「対立する相手とゆずりあう」感じらしいですが、今の言葉遣いでは時々「自分一人で納得する」場合にも使う気もします)
で、筆者は「妥協」という語について、
「あまり満足(まんぞく)してなさそう」とか「苦(にが)い顔をしてそう」とか、
勝手に「マイナス」っぽい語かと思っていたのですが。
しかし「妥協」を調べてみると、解説が意外とプラスっぽい感じもしました。
というのも、「妥協」について、
国語辞典では「両方の意見が対立している場合、互いに折れ合って穏(おだ)やかに話をまとめること」、
漢和辞典では「互いにゆずりあっておだやかに話をつける」など、
「おだやか(穏やか)」という語が使われたりしているからですね。
(「穏やか(おだやか)」とは、静かで落ち着いていることなどですね)
あと「ゆずり合い」という語が使われるなど、いわゆる「いい意味で大人っぽい」「建設的(けんせつてき)」な感じもします(個人的感想)。
しかしだからといって、
「では妥協は全部『プラス』か…?」というと、それはそうでもないようで。
例えば上記の国語辞典では「妥協」について、
「狭義(きょうぎ)では、相手の権力(けんりょく)などに屈(くっ)して、いいかげんな所で自分の主張をごまかすことを指す」という解説もされていました。
(「狭義(きょうぎ)」とは、狭い意味、一部の意味のことですね)
…すごいマイナス面を批判する感じの文ですね。
筆者が上の方で書いた「妥協はマイナスっぽそう」という印象も、この辺りに関係していそうです。
上記の「妥協」のマイナス面…「権力に屈する」、「いいかげん」などが嫌いな方は、
(狭い意味の)「妥協」という言葉を聞いたら、心が「おだやか(穏やか)/平和」ではいられなくなるかもですね。
なので、「『妥協(だきょう)』は『穏やか(おだやか)』なものですか?」という質問に対しては、
「はい!」という人と「いいえ!」という人で、けっこう反応が分かれるかもですね。
広い意味、狭い意味のどちらをイメージするかによっても違いそうです。
※
まあ「妥協」という語を、日常でどれくらい使うかは分かりませんが。
ただもし、誰かと「妥協(だきょう)」という言葉について、
「なんか、すごく話がかみ合わないな…」と思ったら。
上に書いたような、妥協の意味(広い意味・狭い意味)のズレがあったりするかも?
(特に世代が違うと、また違うこともあるかもですし)
そんな時はどっちが正しいのか…といきなり「激しく」ケンカするより、
とりあえずは「穏やか(おだやか)」に、「妥協」の意味確認をしてみるといいかもですね。
まあそんな感じで~。
追記
ちなみに漢和辞典によれば、
そもそも「妥(だ)」という字に、「おだやか」という意味があるようです。
追記2
ちなみに和英辞典では、「妥協(だきょう)」に対して「compromise(コンプロマイズ)」という英語が対応していました。
英和辞典によれば「compromise」にも「歩み寄り」、「解決する」というプラスっぽい意味がある一方で、
「屈服(くっぷく)する」、「信念を曲げる」といったマイナスっぽい意味もあるようです。
日本語でも英語でも、「妥協/compromise」という語に抱える思いは、みんななかなか複雑なのかも知れません。
追記3
ちなみに食品・物作り系のCMなどでは、
時に「素材選びに、妥協しない」的な言葉も語られている印象もあります。
この場合は「途中(とちゅう)で諦(あきら)めない」的な感じで、プラスの意味合いかと思いますが…。
ただ諦めないことが全部いいことか、というのはまた難しいかもしれません。
「コストパフォーマンス」や「タイムパフォーマンス」という言葉もありますし、
なので、「良い結果が出ない」のにひたすら「妥協しない」ことを続けていると、
ただ「周りが見えていない」とか、「退き際を分かっていない」なんて風に言われてしまうかもしれませんね。
(ちなみにこのようなケースでは「コンコルドの誤り」や「コンコルド効果」という語もあったりします。気になった方は調べてみると面白いかもです)